Side Story
少女怪盗と仮面の神父 49
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毛に付いた水滴は、欠伸をしたからだと思いたい。
ハウィスの家で目を覚ましてから三日目の今日。
滞在期限が切れたバーデルの軍人達は、取り調べが終わるまで越境犯達は渡さないと主張するアルスエルナ側に対抗し、ベルヘンス卿と他数名の騎士を「山荘炎上と警備隊員殺害に関する重要参考人」として、アリア信仰の大司教二人を「ベルヘンス卿達の付き添い兼バーデルでの言動見届け役」として伴い、昼少し前に全員帰国した。
初めは最重要当事者も連れて行くと言っていたが、「ずっと寝てたので殆ど何も知らないし、説明を求められてもこれ以上は答えようがない。第一、怪我だらけで憔悴している被害者を国外へ連行するとは何事か!!」と、アルスエルナ勢が総出で拒否。バーデルとアリア信仰ではどちらが社会的信用を多く得られるか考えるまでもない上に、ミートリッテが熟睡する姿は両国間で確認していたので、あまり強気には出られなかったもよう。
これがなんと。エルーラン王子とそっくりな格好で彼の後ろに控えていた二人が、アルスエルナ教会のコルダ大司教と、バーデル教会のタグラハン大司教だった。
二人はミートリッテと軽い挨拶を交わした後、これぞまさしく好好爺といった表情で
『ウチの子が何やらコソコソしてたからねぇ。ちょっと様子を見てみようかって、友人のタグラハン君と手紙で話してたんだ。そしたら殿下が、一緒に観光でもいかが? 丁度今頃は南方領のオレンジが美味しくなる季節なんですよ。と、お誘いしてくれてね。大体一ヵ月くらい前になるかなぁ? 王都を出たの』
『うん、そうだね。私がバーデルの中央教会を出立したのは、それよりもずっと前なんだけどね。陸路は移動に時間が掛かるから困るよ』
『それも観光の楽しみじゃない。いろいろ見て回ったんでしょ?』
『勉強にはなるね。道中の激しい振動に体力をごっそり持ってかれちゃうのが難点だけど』
『ふふ。快適な馬車道の整備は今後の課題かな』
とまぁ、なんとものんびりゆったりな口調で話していたが。
要するに、移動距離の関係上、バーデルの軍人達が入国許可を求めて来る前には王都を出てなきゃいけなかったエルーラン王子が、異変を察知していた大司教二人に声を掛け、第一騎士団を動かす表向きの理由として、リアメルティ領付近までの「視察を兼ねた観光」に同行してもらったのだそうだ。
たまたま近くで「複数の手紙」を受け取ったから急いでやって来ましたよー。という演出の為に、わざわざバーデルの第一都市からも要人を呼び込んでいたとか。本当に、いつからの計画だったのやら……空恐ろしい人である。
とにかくそんな訳で、現在ネアウィック村に残っている武装勢力は、エルーラン王子が率いて来た第一・第二騎士団の小隊と、自警団や村民に
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