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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
骨喰
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 抱き起そうとしたが、途中で動きを止める。
 首が、ない
 切断された頸部からは勢いよく血が吹き出し、血溜まりを広げている。

「うげぇっ」

 現役の祓魔官時代にだってここまで凄惨な死体は見たことがない。

「け、警察を…」

 携帯電話を取り出そうとした宮田の背後からみしり、と床が鳴る。
 今夜は自分たち以外はいないはず。
 みしり、と音がまた一歩近づいた。
だとすると逢坂を殺害した犯人がまだいる

(落ち着け。私は陰陽師だ。不意さえ突かれなければ、ただの一般人に遅れはとらない)

 気を静め、脳内に術式を組みながらゆっくりと振り返る。
 侍がいた。
 時代劇に出て来るような月代を剃った若武者が、抜き身の刀を手にして立っていた。
 その体は青白い霊気に包まれている。

(れ、霊災!? フェーズ3? いや式神か!?)

 霊気は安定し瘴気へと変容してはいないので、正確には『霊災』でないのかも知れない。
 だがなんにせよ目の前には『霊的な脅威』が存在していることに変わりはないのだ。
 若武者は刀を八双に構え、間合いをつめてくる。

「オン・ビシビシ・カラカラ・シバリ・ソワカ!」

 不動金縛りの術。
 しかし若武者の振るう刀によってその術は斬り落とされてしまった。
 あわてて次の術を行使しようとする宮田。
 だが、遅い。
 ヒュンッ。
 鋭い風切り音を聞いたと思った瞬間、視界に床が映っていた。

(な、なんで寝てるんだ!?)

 ばしゃばしゃと大量の液体が顔にかかる。とっさに腕で拭こうとするも、首から下の感覚がない。
 目だけを動かして周りを見る。
 切断された頸動脈から大量の血飛沫をあげている自分の体。
 それが宮田の最期に見た光景だった。





 陰陽庁職員が惨殺された事件は、少なからず世間を騒がせた。
 庁内選挙も近いこともあり、一色辰夫は殺人とは関係ないところで騒がれることとなった。
 ライバルに濡れ衣を着せて失脚させた。陰陽庁とつながりのある企業から賄賂を受け取った。
 そんなことがゴシップ誌に取り沙汰されている。

「ほんと、いやになっちゃう……」

 麗香がため息をつく。
 スキャンダル記事を目にするたびに辰夫は怒っていたが、だからといって娘から『これって本当のこと?』などと確かめるわけにはいかない。
 ただ近ごろ辰夫が庁内選挙のために奔走しているのは事実で、今日も倉橋長官に用があるからと早くから家を空けている。

「気にしないほうがいいよ。人の噂も七十五日って言うでしょ?」
「なにそれ? 天馬君てずいぶん古い言い回しとか知ってるのね」
「え、そうかな?」
 旧家の百枝家で祖父母に育てられた天馬には、同世代から見て
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