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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
骨喰
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だが、そのためか畑違いの辰夫とはあまり馬が合わない。
 今回の選挙で応援してくれるのも、辰夫の能力や人柄を認めているからではなく、利害関係でつながっているからにすぎない。
 無言で手を上げおかわりを注文する。居心地は悪いが知らぬふりをすることにした。
 聞くとはなしに二人の会話が耳に入る。

「――あいつは事務部長なんて器じゃありませんよ」
「――嫁のコネで就職できたようなものだ」
「――やり口が好かん。上には媚びへつらい、下には威張り散らす。小役人の典型だよ」
「――あることないこと、悪い噂をまき散らしているそうだ」
「――あの卑しい目つき。あいつは陰陽師でもなければ公僕でもない、政治屋のそれだよ。しかも三流のな」
「――知ってるか? 今回の選挙では倉橋長官にもおべっか使って色々と画策してるみたいだが、逆効果だろうよ。あの人は実力主義者だ」
「今までの所業を調べられるぞ。後ろ盾を得るどころか、やぶ蛇になるとも知らずバカなやつだ」

 辰夫は激しい動揺を感じた。
 たしかに倉橋長官には根回しをしている。
 そしてそれに対して色よい返事はもらえていない。

「マスター、お勘定」

 辰夫の声に逢坂と宮田が驚いて振り返る。
「お二人さん。良いお話を聞かせてもらえましたよ」
「一色くんか…」

 陰口を聞かれたにもかかわらず、逢坂と宮田の表情には狼狽の色がない。

「少々きついことを言ったかもしれないが、これが我々の正直な本心だよ」
「これを機におべんちゃらやコネを使わずに、実力で勝負してみたらどうだい?」
「…………」

 三人の険悪な雰囲気にマスターが割って入る直前、辰夫は代金を払うと、つり銭も受け取らず店を後にした。





「くそっ」

 携帯電話を取り出し倉橋長官と連絡を取ろうとした。
 すぐに確認したかったのだ。
 自分は見捨てられてなどいないということを。
 なんども呼び出し音が鳴るが、いっこうに電話には出ない。
 その後、自宅に帰った後も家電からも倉橋長官との連絡を試みたが、つながらなかった。
 焦りと不安をまぎらわせるために買ってきた刀でも磨こうと、骨喰の置いてある部屋へ足を運ぶ。
 照明の光を浴びて骨喰藤四郎の刀身が銀色に輝く。
 丹念に刀を磨いているうちに心が静まってくる。と同時にどす黒い怒りが込み上げてきた。
それはやがて自分をコケにした逢坂と宮田に対する殺意にまでふくれ上がっていった。
 殺意とともに妙な自信も湧き起こる。どんな敵もこの刀で斬り伏せてやる――。
 この刀は自分に力を与えてくれる――。

「なにをしているのっ!?」

 部屋に入って来た娘の麗香が驚きの声をあげる。
 軽くウェーブした長めの黒髪、瓜実型の小顔。父親のひいき
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