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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
骨喰
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めた。
 雨はますます激しくなる。

(どこか雨宿りできる場所は…)

 裏路地にある一軒の店から明かりが洩れている。
 これ幸いとその店に近づくと、扉の横には『つくも屋』と書かれた看板が置いてあった。
 中に入ると小さな店内に壺や掛け軸、絵画や彫刻品などが所狭しと並べてある。
(ここは骨董屋か、どれどれ…)
 妻が死んで家に代々伝わる財産が手に入ったし、陰陽庁の職員として安定した給料をもらっている辰夫は骨董品の収集を趣味にしていた。

(ふん、どれも大した物じゃないな。……おや?) 

 なにげなくショウケースに目をやった辰夫は思わず息をのんだ。
 そこには一振りの日本刀が置かれているのだが、その刀の造形には見覚えがあるのだ。

(この刃紋は、粟田口吉光じゃないか!)

 粟田口吉光(あわたぐちよしみつ)
 鎌倉時代中期の刀鍛冶で、特に短刀作りの名手として知られる。
 現存する吉光の刀はいずれも脇差し、小刀だが、一本だけ薙刀を直して作ったという刀が存在するという話がある。
 俗に骨喰藤四郎(ほねばみとうしろう)と呼ばれている刀だ。
 『骨喰』という異名は、この刀を持って戯れに人に斬る真似をしただけで実際に相手の骨が砕けた。という伝説からきている。
 目の前の刀。これはまさに……。

「お気に召しましたか?」

 いつの間に居たのか、店の人間らしき青年が辰夫に声をかける。

「あ、ああ……、失礼。この刀をいただきたいのですが」

 なんとも不思議な夜だった。
 住民票の確認もなしに、住所氏名を書くだけで買い取りができ、今や骨喰は辰夫のもとにある。
 しかし請求書は送られてこない。
 さすがに気になったので、あれから一度店に行ってみたのだが、どうしても店を見つけることができなかった。
 まるで最初から『つくも屋』という骨董屋など、なかったかのようだ……。
 もやもやする気分を晴らすため、仕事の後に一軒のバーに入り、空いていたのでテーブル席に座り、一人でグラスを傾ける。

(なかなか良い店じゃないか)

 次期事務部長の候補に選ばれた自分にふさわしい。辰夫がそんなことを考えていると扉が開き、二人連れの客が入ってきた。

「邪魔するよ、マスター」
「おや、逢坂さん、いらっしゃいませ。今夜は宮田さんもご一緒ですか」
「ああ、久しぶりに飲みたくなってね」
 二人の男は辰夫の同僚で、今度の事務部長選挙で味方になってくれるはずの人物だった。
 逢坂と宮田はすぐにカウンター席に座り、酒を交えてマスターと楽しげに話しだした。
 挨拶する機会を失ってしまったが、もとより個人的に仲が良い関係ではない。
 逢坂も宮田も元は祓魔官だ。
 職務中に霊障を負ってから事務員に鞍替えしたくちなの
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