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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
骨喰
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が、今は当然ない。

「そんなの持って、まさか誰かを殺しに行くつもりじゃ……」
「バカなことを! どうして父さんがそんなことするんだ」
「とぼけないで。あたし見たのよ、父さんの刀が血で汚れてたの」

 感情が高ぶり、今にも泣き出しそうに麗香の瞳には涙があふれている。それを目にした辰夫は哀しみではなく激しい怒りを感じた。
 死んだ妻にそっくりだ。陰陽師だった、妻に。
 陰陽師に。

「ねぇ、落ち着いてよく聞いて。父さん、その刀に憑かれてるわ」
「!?」

 憑かれている。霊災。瘴気。見鬼。式神。生成り、呪術……。陰陽師。
 得体の知れない呪術界。出世のためと陰陽庁に勤めているが、もうたくさんだ。
 陰陽師なんて、もうたくさんだ――。

「父さん、その刀を置いて。それと、お医者さんに診てもらいましょう」
「……倉橋は」
「え?」
「倉橋はな、このおれを見捨てるつもりなんだ。ずっと頭を下げて、汚いこともして、屈辱にも耐えてきたというのに、それなのにあいつはおれを見捨てるつもりなんだ……」

「く、倉橋長官を!? やめて! 父さんはあたしを人殺しの娘にするつもり?」
「なんだとッ!」

 怒りで目の前が真っ赤に染まる。
 こいつは、この女はおれのことなど少しも心配していない。
 自分が殺人者の娘呼ばわりされるのが嫌なだけなのだ。

「麗香っ、おもえという娘は!」

 辰夫は刀を抜き放つと、麗香目がけて一閃させた。
 悲鳴をあげて床にたおれる麗香。なんとか体を起こしてなにかうったえようとするが、力を失いくずれ落ちてしまう。
 骨喰が妖しい光を放つ。まるで新たな血を吸って歓喜したかのように。
 自分がなにをしたのか、もはや辰夫にはわからない。虚ろな目をして赤く濡れた骨喰を手に、ゆっくりと歩き出す。
 その時、玄関の扉が荒々しく開けられ、三人の若者が飛び込んできた。

「辰夫さん、あなたなんてことを!」

 天馬はあわてて麗香に駆け寄り、治癒符を発動させる。

「百枝……、天馬……、娘を、たぶらかす気か? おまえも死ね!」

 麗香を介抱する天馬に斬りかかろうと刀を振り上げる辰夫。
 切っ先が天井板をガリガリと削るが、辰夫の動きに微塵も遅れは出ない。
 憑依されることで筋力も上がっているのだろう。

「禁気則不能起、疾く!」

 気を禁ずれば、すなわち起きることあたわず。
 辰夫は気を絶たれ、文字通り気絶してしまい、糸の切れた人形のようにその場に倒れた。

「禁傷則不能害、疾く!」

 傷を禁ずれば、すなわち害することあたわず。
 続けて放った秋芳の術が麗香の受けた傷を癒す。

「これで傷も残らない。とりあえず横にさせてあげよう。天馬、足のほうを持て。京子は肩
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