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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
骨喰
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 それが剣豪将軍として世に名高い、室町幕府十三代将軍。足利義輝の、最期に詠んだ歌だった。





 現代。
 秋葉原にほど近い、陰陽庁庁舎。

「しっかしとんでもない建物だな、ここは」

 そう口にしたのは僧侶のように頭を剃りあげた短身痩躯の青年。賀茂秋芳だ。

「わかる? ここって奥のほうはほとんど迷宮みたいなものよ」

 秋芳とならんで歩く少女がそう答える。
 ハーフアップにした亜麻色の髪。長いまつ毛に紫がかった瞳、快活でかわいらしい顔立ちをしていて、制服姿でも長い手足やスタイルの良さがうかがえた。
 倉橋京子だ。

「噂には聞いていたが、ウェンチェスター館や二笑亭も真っ青の、とんだ魔窟だ」

 陰陽庁庁舎は戦後間もない頃に建てられた古い建造物で、幾度となく増改築を繰り返しているが、残された部分や引き継がれた個所も多い。
 というのも霊的、呪的な理由で手を入れることが困難な構造や機能があり、実際の施行に合わせて変更することができないからだ。
 さらに増改築のさいに勤めてる陰陽師たちが特殊かつ細かい指示を出しているため、工事のたびに特異な構造が増える一方だ。
 庁舎内で普通に働いているぶんには問題ないが、少し奥まった場所には結界や封印があたりまえのように敷かれており、壁一枚へだてた隣の部屋は異空間につながっている場合さえあるという。

「さらにお役所特有の殺風景ときたもんだ。もっと陰陽塾(うち)みたく絵画や調度品を置いて、緑を増やしたらいいのにな。うちのホールにある竹を見ていると爽やかな気分になる」
「あれはお祖母様の趣味なの。竹は縁起が良くて、人生の学びと高潔さをあらわすから、学び舎にはぴったりだって言うのよ」
「それは良い。実に良いセンスだ」
「……ところで、ねぇ。お父様とはどんなお話をしてきたの?」
 
 京子の言うお父様とは陰陽庁長官兼祓魔局局長。当代最高の陰陽師と称される十二神将筆頭『天将』の倉橋源司のことだ。
 秋芳は京子の祖母、源司の母である陰陽塾塾長。倉橋美代を通して源司の呼び出しを受けたのだ。
 呼び出しの理由は秋芳の書いたレポートの内容について、興味を惹かれたので直接会って話がしたいとのこと。
 その話を聞いてまっさきに思ったのは、今までしてきた裏稼業のことがついに当局にばれて、逮捕のための偽の呼び出しではないか? だった。
 のこのこ出向いたところを呪捜官が総出でお出迎え。お縄にするという段取りだ。
 だがすぐにこの考えは払拭した。
 尻尾を捕まえられるようなヘマをしたおぼえはない。隠密には自信がある。
 ならば塾長の言葉通り、本当に興味があるから話がしたいのだろう。
 しかしそれなら向こうから来るべきだ。
 陰陽庁のトップだろうが、十二神将の長だろうが
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