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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
残照 1
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 丸太のように太い胴をした巨大なムカデ。
 フェーズ3の動的霊災。タイプ・ワームだ。
 そのナイフのように大きな牙が秋芳の身にせまる。

(秋芳君!)
 思わず声をあげる京子。
 軽やかに身をかわすと同時に、金光一閃。
 手にした霊符から延びる光刃が大ムカデの胴を半ばほど断ち斬った。

 シャァァァッッッ! 

 痛みと怒りに震える大ムカデの口から黒い噴煙が吐き出される。

(石化の呪!? 逃げて秋芳君!)

 どういうわけか京子にはその煙に石化の呪詛が込められているとわかった。

「オン・マユラ・キランデイ・ソワカ」
 両掌で孔雀明王印を結び、真言を唱えると、まばゆい光が後光のように射す。
 害虫や毒蛇を駆逐する孔雀明王の力が噴煙を退ける。
 さらにその聖なる光気は大ムカデの体にもダメージを与え、全身を覆う硬質の殻に無数の裂け目が生 じ、そこから毒々しい色をした体液が漏れる。

 ピギャァァァッ!?

 たまらず退散する大ムカデ。

「禁足則不能歩、疾く!」
 足を禁ずれば、すなわち歩くことあたわず。
 どどうっ。
 無数の脚をせわしなく動かして逃げようとした大ムカデだが、その足の動きすべてを禁じられて地に転がる。

「ノウモタヤ・ノウモタラマヤ・ノウモソラキャ・タニヤタ・ゴゴゴゴゴゴ・ノウガレイレイ・ダバレイレイ・ゴヤゴヤ・ビジヤヤビジヤヤ・トソトソ・ローロ・ヒイラメヤ・チリメラ・イリミタリ・チリミタリ・イズチリミタリ・ダメ・ソダメ・トソテイ・クラベイヤ・サバラ・ビバラ・イチリ・ビチリリチリ・ビチリ・ノウモソトハボタナン・ソクリキシ・クドキヤウカ・ノウモタラカタン・ゴラダラ・バラシヤトニバ・サンマテイノウ・ナシヤソニシヤソ・ノウマクハタナン・ソワカ」

 孔雀明王の陀羅尼だ。
 破邪の光が雨のように降りそそぎ、ムカデの形をした動的霊災はたちまち修祓された。

(やっぱり強いわね、秋芳君。あたしが心配することなんてなかったわ)

 そこで、目が覚めた。

「…………」

 見なれない天井が目に映る。
 季節はずれの蝉の鳴き声が聞こえる。
 畳の匂いが鼻をくすぐる。
 障子を通して光が柔らかく差し込んでくる――。
 ゆっくりと身を起こし、寝起きの頭で今がどういう状況なのか整理する。

(ここ、どこ? なんであたしここにいるんだっけ? ええと……)
「あ、目が覚めた? おはよー、京子ちゃん。もうお昼だよ」
どこか猫じゃらしを連想させる柔らかな声質の声がかかる。秋芳の使役式、笑狸だ。
「陰陽医さんのとこには秋芳と純ちゃんだけで行ったよ、予約の時間だったからね。京子ちゃん、気持ちよさそうに眠ってたから……。なんかいい夢でも見た?」
「え?」

 言えない。

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