来訪者
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上げるのは珍しいことだ、結子は嬉しく思った、しかし何かこの男が引っかかるのだ。
「姫川結子さんですね」
「はい、姫川です」
「美人さんですね」
「いえ、ありがとうございます」
「鼻が特徴的ですね」
「……鼻?」
結子が聞き逃さずにたずねる。
「ええ……特徴的ですね、あなたの鼻の穴」
坂田は褒めたつもりだった。
結子はカァーと顔が紅潮していくのを感じた。
鼻は結子のコンプレックスなのだ、結子の鼻はどの角度から見ても穴が見える、正面から見れば“なだらかな“山型、横から見れば鋭角的な三角形、いや、への字と言った方が合っているだろう。
しかし結子は気付いていないがこの鼻こそが男を魅了するのだ、とても魅力的でチャーミングな鼻だ。
結子が男をにらみつける。
「どうしたの?取材?」
木村が加わる。
「木村秋さんですね、知ってます」
「ええ、木村です、よろしく」
「……デビュー」
小声で男がつぶやく、しかし木村には聞こえた、「デビュー」と。
木村は稽古で汗をかいていたがそこに嫌な汗が加わるのを感じていた。
「あの男なにか……怪しい……」
稽古を終え結子と木村が本署を出たところだ。
「また貴女の勘?」
木村がうつむきながら聞く。
「ええ、まあ……」
「まさかあの人が連続殺人犯だとでも?」
とりあえず言ってみた、しかし結子の顔はその問いに満更でもない様子だった。
「あの坂田という男、必ずまた来ます」
結子が自信ありげに語る。
「係長、あ、いえ、お疲れ様です」
結子は木村を飲みに誘おうと思ったのだが息子の凛くんの事を思い出したのだ。
(お母さんの帰りを待ってるものね)
「お疲れ様」
木村が帰って行く、やはり元気がないと結子は思った。
結子は自宅のベッドの上で天井を見上げる。
(犯人はエスカレートしていく、文字からコスプレ、そして本物へ、坂田は本物を見に来た、必ずまた来るわ)
結子は坂田が木村に言った言葉を思い出す。
(デビューってなにかしら?)
少し考えたが答えが見つからず、知らぬ間に眠りについていた。
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