アージェント 〜時の凍りし世界〜
第三章 《氷獄に彷徨う咎人》
舞うは雪、流れるは雲A
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「おっ、りゃあああ!!」
「ハァァァッ!!」
「………………シッ!!」
三者三様の気合いを迸らせつつ、剣と槍が、また鎚と槍が交わる。その度に轟音と、衝撃と、破壊が繰り返され、既に屋敷の内部に無事な部屋など無かった。
「私とヴィータを同時に相手取って互角か。自信家という訳では無いが、気に食わんな。」
「そう悲観するな。一対一でも展開は変わらん。俺は負けない戦いが得意なだけだ。」
三人共未だ目立ったダメージは無い。有効打が一撃も入らないのだ。二人同時に仕掛けているのだから隙はそれなりにあるのだが、絶妙のタイミングで形成される氷の刃が追撃を阻む。超至近距離での戦闘でありながら射撃を使いこなし、騎士と同等クラスの槍術を振るう。こんなタイプの魔導士は、シグナムやヴィータの長い戦歴にもいなかった。
否、はるか昔、一人だけいたような気もするが、あまりにも遠く遥かな記憶で、誰だったのか思い出せない。そもそもそんな暇は無い。
「ええぃ、しゃらくせぇ!!」
ヴィータの渾身の一撃を、暁人はハンマーの柄の部分に槍を打ち込んで止める。遠心力を利用するこの手の長柄武器は先端に威力が集中するため、下手に退くよりは前に出た方がダメージを抑えられる事が多い。
「くそっ!いい加減……吹っ飛べ!!」
しかしヴィータは受け止められたグラーフアイゼンを力任せに振り抜き、暁人を弾き飛ばす。これは想定外だったのか暁人がバランスを崩す。それは、逃すにはあまりにも惜しい隙であった。
「そこだッ!!」
シグナムの一閃。狙い澄ました一撃が暁人の胴部を正確に捉える。この戦闘が始まってから、両者間で最初のクリーンヒットだった。
避けられないと悟った暁人が瞬時に体を捻り、衝撃を逃がす。大したダメージにはならなかったが、均衡は確かに崩れた。
「っ……流石に無謀が過ぎたか。」
「随分チョーシこいてくれたからなぁ……覚悟しろ!!」
体勢を建て直す暁人に鉄槌を振りかざして宣言するヴィータ。シグナムの剣も油断なく向けられている。しかし、暁人に怯む様子は無い。氷の刃を構え、重心を落とす。
「次は……こっちから仕掛けるか。」
言うが早いが、鋭い刺突がヴィータを襲う。弾くのはそう難しく無かったが、直ぐ様引き戻された穂先が連続してヴィータに迫る。よくよく見れば、そのスピードは圧倒的なものではなく、一撃がそれほど重い訳でも無い。反撃に出ようと思えば出られる筈なのだが、何故か出来ない。
行動を起こそうとする度にその起点を正確に潰される。あるいはその瞬間に予測から外れた動きをされる。その為に、反撃の糸口を掴めず、防戦一方となるヴィータ。
「ッ……技量で負けてるってのか、アタシが!?」
暁人はあく
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