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翠碧色の虹
第十七幕:夏の街に弾む虹
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いっ!」

ナンパ男はそう言い捨てて、その場を後にした。

時崎「大丈夫!? 高月さん!」
笹夜「・・・・・」

高月さんは、無言のまま目元が涙ぐんでいた。

心桜「あいつ〜!!」

俺はナンパ男の捨て台詞である「怪力女」という言葉から、高月さんは結構手の力が強いという事を理解した。見たところ、言い方は悪いかも知れないが、華奢な印象だったので意外に思う。高月さんは手の力が強い事を悩んでいるのかも知れない。

そう言えば、ファーストフード店を出る前、先に支払いを済ませてくれていた七夏ちゃんへお金を渡す時、同じメニューを頼んでいた高月さんの分も一緒にまとめる事になり、高月さんからお金を受け取ろうとして、手が少し触れてしまった。高月さんは驚いて素早く手を引っ込め、その勢いでお金を落としてしまい、俺に謝ってきた。手が触れて驚かれた事は、ほぼ初対面だからそんなものかと思って気にも止めなかったけど、もしかすると・・・手の力が強いという事が関係しているのかも知れない。高月さんは、雑貨店で七夏ちゃんや天美さんに手を繋がれたりしても、特に拒む様子ではなかったので、あの反射的な行動は俺に対してだけという事になる。俺は、高月さんの手の力が強くても気にならないが、高月さん本人が気にしているのなら、今後、気を付けなければならない。

笹夜「と、時崎さん・・・」
時崎「え!?」
笹夜「すみません・・・駅までの道を聞かれたから、駅の方角を教えるつもりだったのですけど・・・」
時崎「駅の方角なんて、訊かなくても分ると思うけど・・・よくあるナンパの手口だよ・・・。とにかく気をつけないと!」
笹夜「ありがとうございます・・・」
心桜「笹夜先輩! 大丈夫ですか!?」
笹夜「え、ええ・・・ありがとう。心桜さん」
七夏「どしたの? ここちゃ・・・笹夜先輩!?」

七夏ちゃんも書店から出て来た。

笹夜「な、なんでもないわ。七夏ちゃん」
時崎「七夏ちゃん、お買い物は済んだの?」

俺は、笹夜先輩の意思を読み取って、七夏ちゃんを巻き込まないように話題を変える。

七夏「はい☆ あと、これ☆」
心桜「おっ! ブックカバー!!」
七夏「四人分あります!」
時崎「四人分って!?」
七夏「えっと、みんなの分・・・です☆ もし、誰も要らなかったら、私が・・・」
心桜「いるいる! ありがとー! つっちゃー!」
笹夜「私も! ありがとう! 七夏ちゃん♪」

七夏ちゃんの瞳の色が綺麗な翠碧色になっている・・・。

時崎「俺も、喜んで頂くよ! ありがとう! 七夏ちゃん!」
七夏「・・・はい☆」
心桜「お兄さん、ブックカバーに入れる本・・・持ってるの?」
時崎「あ、天美さんこそ!」
心桜「あたしは、持ってるよ!」
時崎「漫画とか?」
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