暁 〜小説投稿サイト〜
赤き巨星のタイタノア
最終話 「好きに生きる」
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敢でありつつもどこか情けない主神を――信者達は、苦笑いを浮かべながら見守っていた。彼の情けなさなら、もうとっくにバレているのである。

「……全く、ちょっとはマシになったかと思えば……」
「マシにはなったさ。一度でも恐怖に打ち勝てたなら、その記憶は必ず自信に繋がる。いつかきっと、虚勢に頼らなくてもよくなるよ」
「……タケル様も、父には甘いんですから……全く」

 口ではきつく当たりながらも、ルクレイテは醜態を知られながらも神であり続けている父の人徳に、思うところがあったのだろう。光線銃を威流に返す瞬間、彼女は至福に満ちた笑みを浮かべていた。

「さて……じゃあ、オレ達はそろそろ行くよ。帰りを待ってる人達も、いることだしな」
「はい。それでは、タケル様……どうか、お元気で。許嫁の方と、お幸せに」
「ははっ、そうだな。それじゃあ……いつか、また会おうな」

 ――やがて、出発時刻が迫り。威流は竜也のコスモビートルに乗り込み、仲間と共にこの星から飛び去っていく。
 そんな彼らを、神官達が黄色い歓声で見送る中……巫女は、ただ1人。

「ええ。――いつか(・・・)、また」

 悪戯っぽく笑い、その白い口元を緩めていた。

 ◇

 ――見慣れた木造の天井。それを見上げながら目を覚ました威流は、祭壇で目覚めたあの日が嘘のような、穏やかな朝を迎えていた。
 身を起こした彼は、地球の空気を匂いで感じ取り、表情を緩める。

「ん……朝、か」

 小鳥の囀りや、葉が揺れる音ばかりが響く、静かな庭。獅乃咲家の屋敷内からそれを見つめる威流は、ようやく掴んだ「平和」を噛み締めるように天を仰ぐ。

(あれから1週間。やっと、日常が戻って来たって感じだな)

 ――地球に帰還した後、威流達は軍による身体検査や状況報告を命じられ、あるがままを話した。
 大抵の人間なら、彼らの話は絵空事だと一笑に付しただろうが……怪獣軍団から人類を救った英雄の言葉だと、説得力が違う。

 軍部はただちに件の惑星に向かい、正式な交流の場を設けようと動き出した。上手くすれば、人類の生態圏を拡大する好機である――と。
 だが、それは我欲のために星々を蹂躙してきた怪獣達と何も変わらない。それを指し示すように、惑星のバリアは地球守備軍の干渉の一切を、遮断していた。

 ――軍部はそれでも諦めきれず、今度は威流達を出汁に進入を試みるのだが。星の外にいる者の心すら見抜くルクレイテの超能力に、全てを読まれ。威流達ですら通さないほどの強固なバリアを展開してしまうのだった。
 結局、打つ手がなくなった軍部の判断により、この惑星の調査は再び保留となり。人類の新惑星への進出計画は、凍結となった。

(やっと帰ってこれたと思ったら、上層部からは質問責めだ
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