第8話 招かれざる客
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てやらなくちゃ。力があるとかないとか、そういう問題じゃないんだよ」
「本当に……それが、正しいのでしょうか」
そんな彼女の苦しみの色を滲ませた顔を、真摯に見つめて。威流は目を細め、その本心を突く。
「……君だって心配なんだろう? タイタノア――お父さんのこと」
「……」
ルクレイテは、すぐに答えることが出来なかった。
戦いから逃げ出した憶病者でありながら、救世主に対して不遜な態度を取り続けていた父を――娘として、家族として案じていたと、認めてしまったら。それこそ、被害者である彼に顔向けできない。
そう思いつつも、真っ直ぐ自分を見つめる威流の瞳に、嘘をつけるはずもなく。彼女は再び、観念したような表情を浮かべて目を伏せた。
「私は……人には生まれながらに、それぞれに課せられた役割があると思うのです。個人の都合で好きに生きるなど、許されることでは……」
「そう、かもな。……だけど、オレはずっと好きに生きてきた。だから、ここにいる」
「……」
「嫌々やってることに、本当の全力なんか出せないさ。オレが無理やりタイタノアに乗り込んだとしても、きっとあいつには勝てないって思う」
そんな彼女の、苦悩に対し。威流は全く気にしていない、とばかりに屈託のない笑みを浮かべている。巫女はやがて、彼が呟く言葉に反応し――目を見開き顔を上げた。
「……好きに、生きる……」
「あぁ。好きに生きるから、その時に人は本当の強さを引き出せる。……そんな簡単なことにも気がつかないんだから、救世主って奴はダメダメだな?」
好きに生きる。これほど、言うのが容易く――実践するのが難しい言葉はない。
少なくとも……憶病者の父を神として祀り、嘘の伝説を流してきたルクレイテにとっては。
ゆえに彼女はこれまで、長きに渡り自分を殺して「巫女」の役目に徹してきた。――そんな彼女が、敬愛する救世主に「好きに生きていい」と言われて、何も感じないはずがなく。
「……では、私も……好きに生きても、いいのでしょうか」
「そりゃあそうだろう。お父さんだって、ああやって好きに生きてるんだ。娘の君が我慢ばっかりってのも、フェアじゃないだろ」
「……そうですか。ではいつか……私も、『好き』にしようかと思います」
ようやく、ありのままの自分を認めてくれる「ヒト」が現れたのだと――静かに、歓喜した。声を震わせ、叫びたくなるような想いを、理性で堪えながら。
「……」
「……どうされましたか?」
「いや。なんかルクレイテさん、ちょっと顔つき変わったかな……って」
「そ、そうですか?」
「あぁ。なんだか、凄く可愛かった」
「かわっ!?」
そんな彼女の隠し切れない「変化」に、威流は小首を傾げながらも――その表情から漂う前向
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