第8話 招かれざる客
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『私は……私は、好きでこの家の娘に生まれたのではありません! 私だって、本当は……戦いたかった! 大切な人と、苦楽を分かち合って生きて行きたかった! こんな、こんな大変な時に、何もできない体なんてっ……!』
大切な相手が死地に赴いているというのに、共に戦うことすら出来ない。その苦しみを知らず、いつまでもはぐらかすように笑っていた自分を――威流は、今になって見つめ直していた。
(誰も、生まれは選べない――か)
やがて、逡巡の果てに彼は顔を上げ、神妙な面持ちでタイタノアの姿を見つめる。そこへ、父に軽蔑の眼差しを送るルクレイテが歩み寄ってきた。
「……」
「全く、情けない。父上、いい加減に腹を括ってくださいませ。これ以上駄々をこねると仰るなら、力尽くでも――」
そしてこれ以上、威流の手を煩わせまいと「合体」を強制しようとする――のだが。
「……タケル様!?」
「いや……もういい。もう、いいよ」
その直前、というところで。当の威流によって、制止されてしまうのだった。彼の口から出てきた言葉に、ルクレイテは瞠目する。
「タイタノア。もう、あんたには頼らないよ。出来もしないことを無理にやらせようとして、済まなかったな」
『ヒュ、ヒュウガ・タケル……!?』
「タケル様……!」
「あの大怪獣なら、自分で何とかするよ。あんたはあんたで、守り神としてこれからも頑張ってくれ。……じゃあな」
さらにタイタノアも、驚きの声を上げて威流を見遣る。そんな彼を、地球人の戦士は物憂つげな視線で見つめた後――踵を返して、立ち去ってしまった。
(……オレは、力になりたいって真剣に思ってくれていた葵と、真面目に向き合わなかった。そんなオレに、タイタノアのことをとやかく言う資格なんて、ない……)
◇
「タケル様!」
――その後。森の中で静かに眠る真紅のコスモビートルを、あり合わせの屑鉄で補修している威流の元へ、ルクレイテが駆け寄ってきた。
パイロットスーツの上着を脱ぎ、黒のTシャツ姿になっていた彼は、油汚れに塗れながらスパナを手に作業を続けている。
「ん……済まなかったな、ルクレイテさん。『合体』の件、せっかく色々考えてくれてたのに」
「貴方の……許嫁の方のこと……ですよね」
「あはは、やっぱそれも読まれてたか」
超能力により内心を読まれていたことを悟り、威流は苦笑いを浮かべる。一方ルクレイテは、彼の心中を知りながら何一つ声を掛けられなかった自分を嘆き、苦々しくその貌を歪めていた。
「……お願いしている立場の私に、このようなことを申し上げる資格などない……ということは、重々承知しております。しかし!」
「いいんだ。タイタノアが戦いたくないって言うなら、それは尊重し
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