第8話 招かれざる客
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駆け巡る。小鳥や先ほどの猟犬など、あらゆる動物達が方々へと逃げ出して行った。
「とりあえずその上から目線やめろって! 今は協力してあいつを倒さないと、みんな殺されるんだぞ! この星のみんなだって危ないんだ!」
『……!』
崖を飛び越し、枝から枝へ跳び移りながら、威流は懸命に叫ぶ。やがて、その声に呼応するように――タイタノアは足を止め、森を揺るがす振動が止まった。
(立ち止まった! やっぱり、この人も自分の民を守ろうっていう確かな想いが――!)
その反応を前に、威流はようやく自分の言葉が届いたのだと頬を緩める。……のだが。
『なおさら嫌だぁあ! せっかく皆の者が、余を神と崇めてくれておるのに――もし負けたりしたら、ゲンメツされてしまうではないかぁあ!』
「……だからオレが勝たせてやるっつってんだろ! グダグダ抜かしてないで力貸せや臆病神がぁあぁ!」
今度はさらにスピードを増して、逃げ出してしまった。筋金入りの臆病神を前に、威流は柄にもなく声を荒げてしまう。
(……んっ!?)
――すると。どこか見覚えのある影が、群れをなして茂みから飛び出してきた。そのシルエットを目の当たりにして、威流は目を見張る。
「あの時の猛獣達……!」
先日、大怪獣の影響により獰猛化していた猟犬達が、今度はタイタノアに群がっていたのだ。
『ひ、ひぎゃあぁあ! なぜこっちに来るのだあぁあ!?』
(そりゃ、あいつの方が肉は多いもんな……巨人なんだし)
その殺気を前に、圧倒的な体躯がありながらタイタノアは情け無い悲鳴を上げ、再びのたうちまわる。そんな彼の様子を、威流はなんとも言えない表情で見つめていた。
『く、来るな来るな! 余を誰と心得る! お、おいヒュウガ・タケル! 何をしておる、早く、早くその銃でなんとかせいっ!』
「……はぁ」
やがて、盛大な溜息と共に。彼は巨人の涙声に応えるように、光線銃で威嚇射撃を行い猟犬達を追い払う。
その後、散り散りに逃げていく群れを見送り――頭を抱えて震えているタイタノアに歩み寄って行った。
「……あのさぁ。本当ならあんただって強いんだろう? なんでそんなに強い力があるのに、自力でどうにかしようって思わないんだ?」
そんな威流の、呆れたような視線を背に受けて。タイタノアはキッと振り返り、涙声のまま訴える。
『余だって、余だって、好きで機械巨人族に生まれてきたのではないわい……! 生まれつきの体のことでアレコレ言われたって、無理なものは無理じゃ!』
「……!」
その姿に、ルクレイテは冷ややかな眼差しを送るが――威流は、違っていた。目を見開き、胸元を握り締める彼の胸中には……「生まれ」ゆえの悲しみを叫ぶ婚約者の言葉が過っている。
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