暁 〜小説投稿サイト〜
赤き巨星のタイタノア
第1話 救世主、来たれり
[1/2]

前書き [1] 最後 [2]次話
 ――地球から遠く離れた、暗黒の海原。ひとたび青い母星を見失えば、自分の居場所など一瞬で分からなくなるような――永遠の闇。
 その無の空間を、3機の宇宙戦闘機「コスモビートル」が駆け抜けていた。赤、青、黄。その三色に分けられた鋼鉄の翼が、巨大な「何か」から逃れるように……この宇宙に、己の軌跡を描いている。

 ――そして。大きく揺らめき、蠢く「何か」の影は。殿(しんがり)を務めていた赤い機体を、執拗に狙っていた。

「くそッ……まさか、こんなッ……!」

 その機体を駆る、若き青年。彼は自分の頭上から、覆い被さるようにこちらを見据える赤い眼光を――「焦燥」に満ちた瞳で見上げていた。
 青い機体と黄色の機体を操る、男女のパイロット達も。殿に迫る死の脅威を前に、悲痛な声を上げる。

『ダメだ! もう持たん、逃げろ威流(たける)ッ!』
『お願い、逃げて威流ッ! 私達のことは、もういいから……!』
「大丈夫、だッ! 絶対助けて見せるから……オレを信じろッ! ――円華(まどか)! 竜也(たつや)ッ!」

 だが、そんな彼らの言葉に耳を貸さず。赤いコスモビートルのパイロットは、操縦桿を切り機体を反転させる。
 眼前に迫る、視界を埋め尽くすほどの影。その脇下をすり抜けるように、赤い機体が流星の軌跡を描く。

(しかし、こんなのさすがに想定外過ぎるぞ……!)

 そして、鮮やかに背後を取り――機体に搭載された、レーザー砲を放つ。灼熱の閃光が一条の輝きとなり、巨大な影に突き刺さった。
 確かな手ごたえを感じさせる、「何か」の呻き声。それを耳にしても、若きパイロットは慢心する暇もなく操縦桿を握り締める。
 その表情は、レーザー砲を命中させた今でも、緊迫感に満ちていた。

 ――その一方で。青い機体と黄色い機体が、巨大な影から逃れるようにバーニアを噴かせていた。仲間達が脱出していく姿を見送り、青年の表情が微かに緩む。

(よし……もう一息で、2人とも離脱できるな! あとはオレがッ……!?)

 ――それが、命取りだったのだろう。遙か彼方へと飛び去る二つの流星を、青年が見送った時。
 ふと彼が顔を上げた先で――巨大な影が、その大顎を開き。

「ま、ずった」

 刹那。宇宙を染め上げんと唸る火炎の嵐が、一瞬にして青年の視界を覆い尽くした。

 彼は反射的に操縦桿を握ると、再び機体の向きを急速に切り替え、回避を試みる。
 ……が、人類の叡智を結集して開発された、最新鋭宇宙戦闘機のポテンシャルを以てしても。

 全てを穿つ火炎放射を、かわし切ることは出来なかった。

「……! あ、あぁあ……!」
「ちっ……ち、くしょうッ……!」

 大破、炎上し。錐揉み飛行で闇の彼方へ消え去っていく、赤いコスモビ
前書き [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ