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ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
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特殊条件
(
サドンデスルール
)
。
例え事故だろうとも、レベル9であるスカーレット・レインの攻撃を受けて、同じくレベル9であるブラック・ロータスの体力ゲージがなくなれば、その時点で黒雪姫のニューロリンカーからBBプログラムが強制アンインストールされる。そうすれば自分は二度とこの加速世界へ足を踏み入れることなどできなくなる。
だが。
ふふんと底意地の悪い笑みを浮かべながら言葉を紡ぐ。
「なんだ心配しちゃったのか?つい先日、私をレーザーで焼き焦がしただろう。熱かったぞ、アレ」
「チッ、まだ根に持ってんのかよ。もともと黒いから焦げ目がついてもわかりゃしねぇっての」
ほんの数日前の《災禍の鎧》討伐戦のことを引き合いに出しながら茶化すと、ニコも苦笑交じりに会話にのった。
「……ミサイル一斉射、信管は抜け。それでルートを縛る」
「あいよ」
緩めた糸を、引き絞る。
凛と響く声に、深紅のアバターも炎のような闘志を漲らせた。
「行くぞ……ゴー!」
「着装!《インビンシブル》ッ!!」
鋭いボイスコマンドが、月光に蒼くライトアップされた梅郷中の校庭に轟いた。
次の瞬間。
夜闇を引き裂く重低音が、戦場の場に開始の合図となって鳴り響いた。
「着装!《インビンシブル》ッ!!」
まだあどけなさが残る少女の声が減衰して消える前に、黒雪姫はもう走り出していた。
後ろからは、ごごがががガゥンンン!!という金属質な鈍い音が連続して追ってくる。今頃、あのミニマムサイズな少女型アバターの周りには、次々と巨大なポリゴンブロックが現れているはずだ。
赤の王にして《
不動要塞
(
イモービルフォートレス
)
》と呼ばれ、畏れられる彼女の代名詞にしてその存在定義。
本質。
大型エネミーに比肩しうるほどの巨躯を包むのは、機銃やミサイルポッドなどの遠距離火器。側面にそれぞれ据えられている長大な二門の主砲が放つプレッシャーは壮絶だろう。
見るからに弱そうだったレインの予想外の変形に、少年のマフラーに隠された口元が、さらなる笑みに歪むのがはっきりと見える。
―――せいぜい見下していろッ!
アバターとしては珍しいホバー移動の恩恵で、本来ブラック・ロータスに足音というものは存在しない。しかし、限界まで身体を沈めさせ、脚部にかかる力が尋常ならざるものになっている今、脚剣の切っ先から飛行機雲のような煙と、虫の羽音のような擦過音が鳴る。
相手の心意に対しての躊躇は一切ない。こちらが王クラスだからかは知らないが、少なくともあそこまでの大規模な破壊の心意をほぼノータイムで放てるのであれば、広域ではなく限定域下における心意技はどれほどの威力になるのだろうか。
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