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彼岸花 [短編集]
ウミホタル
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わ。それに真冬だというのに白いワンピース一枚でいるのは白装束の代わりなのかしら。
ここは彼岸岬。地元では有名な自殺スポットで毎日沢山の人が母なる海にその命を帰そうとやってくるの。
だから蛍にとっては最高の狩場と言えるのね。
隣に立っていたはずの蛍。気づけば遠くに見える女の人の傍にまで近づいて、

「お姉さん綺麗だね」

と声をかけて女の人が振り返った瞬間

「――――っ!」

学生服の中に隠し持っていた果物ナイフを取り出して、女の人の喉をを掻き切った。頸動脈を断ち切られて、盛大な血飛沫が吹き上がるの。……綺麗な噴水ね、とでもいいのかしらね。

「…………っ!?」

声を出すことの出来ない女の人は見開いた瞳孔だけで驚愕を表していたわ。それもそうよね。死ぬために岬に来て、まさかその岬で殺人鬼に出会って殺されるなんて、誰が思いつくかしら。
苦しみに喘いで暴れようとするのを蛍は許さない。つかさず脇腹を一刺しそれだけで女の人は大人しくなったわ。致死量を超えてしまったのね。死因は出血死と覚えていおくわ、覚えている限り。

「ふんふーん♪」

鼻歌まじりにナイフをこと切れた女の人に突き立てワンピースを引き裂いていく蛍。……私はお邪魔なようね。背を向けて行為を見ないようにするの。それに人の行為なんて見たくないわ。
もう分かっていると思うけど、海空 蛍は殺人鬼。しかも生まれ持っての殺人鬼。生粋の殺人鬼。私が呼吸しないと生きられないように、蛍は誰かを殺さないと生きられないの。だから蛍は一日一人は殺すの。死んでも困らないような人を殺すの。そして肌を合わせ愛し合う行為をするの、蛍は屍姦(しかん)愛好者、ネクロフィリアだから。
初めて蛍が殺人を犯したのは五歳の時。相手は父親が再婚して連れて来た新しい母親。
蛍は新しいお母さんを好きにはなれなかった、でもお父さんは好きになれと仲良くなれと蛍に言ったそうよ。だから蛍は殺したの。新しいお母さんを好きになるために。まずはぐちゃぐちゃんの肉塊にして内に秘めている物を全部露わにしたの、この岬でね。凶器はたまたま持っていたハサミ。
私はそれをたまたま通りがかって見てしまった目撃者ってわけ。幼い頃、両親とはぐれた女の子が見たのは自分の母親を殺すイカレタ殺人鬼が歌い踊って遊んでいる姿と言うわけ。
殺されると思った。犯人にとって目撃者ほど厄介なものはないと幼いながらに知っていたから。でも殺されなかった、何故だと思う?
「キミはボクのタイプじゃナイからイラナーイ」だそうよ。とりあえず命は助かったけどいつ口封じに殺さるかわからない恐怖、あの日見た脳裏に焼き付く光景は、死ぬまで消えないでしょうね。
精神科医にも行けない、誰にも治す事が出来ないのなら、恐怖に震える日々を送るくらいなら、

「――犯罪の片棒
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