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勇者にならない冒険者の物語 - ドラゴンクエスト10より -
始まりのジュレット1
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 酒場のカウンターを出て、バルジェンはダーマの神官にならって冒険の書に職業を記入しようとしていた。
 記入と言っても、直接ペンで書くわけではなく魔力の込められた羊皮紙の裏に掌を当てて表を冒険の書に押し付けるだけだ。
 そうして職業を宣言すれば、その時点の肉体のポテンシャルに応じて職業名と職業レベルが冒険の書に記録されるのだという。
 そして、御都合主義な事だが、ダーマの神官から職業の洗礼を受けると魔法や職業毎のスキルが身につくようになるらしい。ので、ある程度の回復と支援の魔法が使える旅芸人を選ぶことにした。

「あの()達に頼り切るわけにもいかないだろうしな」

 バルジェンの独り言に、ダーマの神官は水晶球を片付けながら受け答えた。

「貴方を助けるのが彼女達の選択であったのだとするならば、それに頼るのが必ずしも間違いでは無いでしょう。貴方もまた、彼女達を助けてあげればよろしいのではありませんかな?」

 神官の言葉に、バルジェンは悩ましげに苦笑してみせる。
 神官はそれ以上は何も言わずにカウンターの下から一本の両手棍を取り出すとカウンターの上に置いた。

「わたしも神官になる前は僧侶として冒険者を務めていたものです。今となっては、この棍も無用の長物。貴方の技量ならば扱えましょう。彼女達に頼りなさい。代わりに貴方は、彼女達の刃になって守ってあげれば良い。冒険者に限らず、人はお互いを支え合っていくもの。恥じることはありません」

 バルジェンは差し出された棍を手に取ってみる。美しくも落ち着いた緑の染色がされた高級そうな両手棍だ。端部には龍をあしらった鋼の装飾が施された、素人目にも業物とわかる武器だった。

「これは、流石に受け取れません。どう見ても初心者が持つには不釣り合いな武器ですよ」

「貴方が受け取らねば、次に実力のあるものが現れるまで、ここで眠り続けるだけの代物です。地味ですから、あまり人気の無い武器ですしね。それに神官として二十年。初めて渡しても良いと感じたのです。是非受け取って頂きたい。それに、丸腰で彼女達を守れるおつもりか?」

「それは、何というか。・・・自分に資格があるのかどうかもわかりませんし」

「それを決めるのは、貴方ではない。彼女達自身では、ないですかな?」

 神官の言葉にしばし逡巡するが、神官が力強く頷いてみせると、バルジェンは意を決して龍の装飾が施された両手棍を大げさなほど厳かに受け取った。

「では、その・・・。お預かりいたします」

「差し上げるのです。不要になったのであれば、次の方に譲るがよろしかろう」

 あまりにも清々しいダーマの神官の笑顔に、バルジェンは恐縮しながら深くお辞儀をしてカウンターを離れた。
 少し客の増えだした酒場内を、居心地悪そう
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