第三章
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「いいな」
「うん、けれど今はね」
「そこまで言うなら仕方ない、ただな」
「あの娘の言葉は」
「そのうちわかる」
今はわかっていないがというのだ。
「人を外見だけで区別する奴はな」
それこそとだ、また知子を見て言う。知子は二人の方を見向きもしない。そのうえで彼女の友人達と話している。
「碌でもない奴でな」
「そうした人の言うことは」
「気にするな」
また言うのだった。
「いいな」
「そうなんだね」
「そのうちわかるかもな、ただ今はか」
「どうしてもね」
太の返事は変わらなかった。
「だから痩せていくよ」
「倒れない様にな」
彬は太に本気で気遣う声をかけた。だが。
太はダイエットを続けてそして彬の危惧した通りにだった、ある日倒れてそうして病院に担ぎ込まれ。
栄養失調と衰弱で入院した、その彼に見舞いに来た彬が尋ねた。
「言った通りになったな」
「そうだね」
太は病室のベッドの中から彬に応えた。
「この通りね」
「馬鹿が、しかしな」
「しかし?」
「これでわかったな」
その彼にだ、彬は言った。
「痩せ過ぎるとな」
「こうしてだね」
「身体自体が参ってな」
そうしてというのだ。
「入院しちまうんだよ」
「そうだね、下手をしていれば」
「死んでたぞ」
実際にそうなっていたというのだ。
「冗談抜きでな」
「そうだよね」
「ああ、それでな」
「それで?」
「ひょっとしたらな」
彬は太にこうも言った。
「御前はまだわかることがあるかもな」
「前に学校で言ってた」
「ああ、人を外見で判断する奴はな」
「碌な奴じゃないってことがだね」
「わかるかもな」
「雅さんかな」
知子の名前をだ、太は自分から言った。
「あの娘かな」
「そうだよ、あいつだよ」
「あの娘のことで何かわかるんだ」
「そうかもな」
こう太に言うのだった、見舞いの品のドーナツを彼に差し出しつつ。
「あいつのことも」
「そうなんだね」
「ひょっとしたらな」
こう前置きもするのだった。
「わかるかもだよ」
「わかるかな」
太は彬に少し疑問符の付いた言葉で応えた。
「本当に」
「だからそうかも知れない」
「そうかも、だね」
「そうだ」
こう言ってだ、彬はそれから太と暫くは世間話をして病院を後にした。その後も毎日の様に見舞いに来た。
他のクラスメイトや友人達、担任も来たが。
明日退院という日に見舞いに来てだ、彬は太に尋ねた。
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