第五章
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「本当にね」
「そんなに幸せなのよ」
「うん、何から何まで教えてもらって」
「?まさかあんた」
ここで彼の異変に気付いた、それで眉をぴくりと動かしてすぐに問い返した。
「私と一緒で」
「えっ、君も?」
「前にね」
「まだ小学生なのに」
「それはあんたもでしょ」
界人に慌てた口調で返した。
「もうそこまでいったの」
「先生に教えてもらって」
「私はまあ。この前たまたま二人きりになって流れで」
「そこまでいったんだ」
「そうだったけれどあんたは」
「先生にね」
教えてもらったというのだ。
「そうだったけれど」
「いきなりそこまでいくなんて」
「小学生だから早いとは言われたけれど」
「まあそれはね」
「それでもね」
「やれやれね、一気にいったわね」
「そうだよね」
「お互いにね。けれど」
気を取り直した感じで界人にあらためて言った。
「これからも先生とね」
「うん、付き合っていくよ」
「そうしてね。水泳も頑張ってね」
「今度は五級を目指すよ」
今の六級からというのだ。
「そうしてね」
「選手になるのね」
「先生みたいにね」
「私も目指すわ、まあ水泳もあちらのことも」
つまり恋愛もというのだ。
「お互いにね」
「頑張ろうね」
「ええ、ただ私もあんたも注意することはあるわよ」
ここで界人に真剣に言ってきた。
「教えてもらっても」
「ええと」
「結婚とかはまだよ」
「そういうことだね」
「そう、付き合っていてもね」
二人共まだ小学生だ、由紀恵は十九歳で結婚出来るがだ。
「だからそこはね」
「ずっと先だね」
「そうよ、そのことは後よ」
結婚出来る年齢になってからというのだ、こう話してだった。
「わかってるわよね」
「結婚とかとても」
界人にとってもだ、慌てて返した。
「考えられないよ」
「そうよね」
「それに確かに先生が教えてくれてるけれど」
「そうしたことも」
「教えてくれてるから」
「私もよ。しっかりと持ってるからね」
何を持ってるかはあえて言わなかった。
「実はお母さんがこっそり私にくれてるし」
「えっ、そうなんだ」
「そうよ、色々あるからって」
「まだ小学生なのに」
「小学生でもよ、だから二人きりになれた時にね」
まさにその時にというのだ。
「出来たし」
「そうした心配もなくて」
「そうよ、だからあんたもね」
「そうしたことは気をつけて」
「先生と宜しくね」
「わかったよ、それじゃあね」
こうした話もひそひそと周りに聞こえない様にしつつだった。界人はこの日も水泳の練習に励んだ。
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