五 鈴鳴る向こう
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鈴が鳴る。
砂に染み入るような涼しい音色。
どこか物悲しい音は夜が奏でる風に溶け、やがて消えてゆく。
頭上を覆う巨大な鳥を見上げ、次いで正面を見やったデイダラは軽く肩を竦めた。
「やっと砂ともおさらばだな…」
砂漠から一転、鬱蒼とした森を見て、うん、と口癖を言えば、隣から不機嫌そうな声が返ってくる。
「人を待たせるのは嫌いだ…急ぐぞ」
我愛羅を追ってきたカンクロウの相手をしていたサソリの言葉に、デイダラは薄く苦笑する。
「やれやれ…誰のせいでこんなに時間食ったと思ってんだ」
自分のことを棚に上げてのデイダラの発言に、サソリは間髪入れず、反論した。
「それはお互い様だ」
「そうだった」
再び肩を竦めたデイダラは背後を振り返る。広大な砂地が広がる光景のずっと向こうを、彼は長い前髪の合間から覗き見た。
「追い忍は…さっきのサソリの旦那が相手にしたヤツだけか、うん」
「追い駆けたくとも追えない現状なんだろうよ」
「そりゃどういう意味だ、うん?」
首を傾げるデイダラに、サソリは剣呑な細い瞳を更に細めた。
「言ったろ…俺はお前と違って準備は怠らないんだよ」
砂漠に吹き荒れる風が、デイダラとサソリの外套を大きくはためかせる。
黒地の中心の赤い雲模様が、月下にて異様に赤黒く浮かび上がった。
「引っ掛かるように作るのがトラップ。そして気づかれないうちに仕込むのも、トラップってもんだ」
ククク…、と喉を震わせるサソリの笑い声が、鈴と風の音に雑じり合う。
砂嵐の向こう側を見やるサソリの眼には、今し方強襲した、そして郷愁に駆られた、砂隠れの里が見えなくとも映っていた。
解毒に成功し、カンクロウが眼を覚ました。
彼は転んでもただでは起きぬ根性で、サソリの服の切れ端を『暁』の手がかりとして、最後の力を振り絞って得ていた。
その切れ端の匂いをカカシが忍犬達に辿らせ、その知らせを待っている間、砂隠れの里に新たな災難が降りかかる。
「た、大変です…!!」
慌てふためいた砂忍が、突然治療室に飛び込んできた。
次から次に襲い掛かる凶報に、バキはただでさえ、眉間に寄せていた皺を更に深くする。
「なんだ、いきなり…!」
「そ、それが…通路の起爆札を取り除いていた者達が突然、倒れて…!!」
「なに…!?」
バキが驚愕の声をあげるよりも、医療忍者であるヒナタといのが、逸早く飛び出す。
砂忍の案内で辿り着いた別の治療室は、病人で溢れかえっていた。
「な…なんだ、これは…っ!?」
愕然と立ち竦むバキとテマリに反して、ヒナタといのは患者達の容態
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