第一章
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追い込み
住之江百合はこの時誰がどう見ても疲労の極みにあった、目の下にはクマが出来ていて肌は荒れ放題で髪の毛もボサボサだ。
その彼女を登校する時に見てだ、妹は姉に問うた。
「お姉ちゃん寝てる?」
「全然」
これが百合の返事だった。
「寝てないわ」
「やっぱり」
「だってもうすぐね」
「冬のコミケだからよね」
「締め切りまでに完成させないといけないから」
コミケに出す作品をというのだ。
「だから今ね」
「追い込みなのね」
「そう、期末テストが終わって」
この時も毎日遅くまで勉強していた、普段から勉強するタイプの百合だがテスト前は徹底的に覚えなおすタイプなのだ。
「それですぐにね」
「今度はコミケね」
「それがあるから」
「それはわかるけれど」
ゾンビの様な顔で食事を摂る姉に言う、それは高校の制服を着ているゾンビだった。
「けれど何か今のお姉ちゃん死にそうよ」
「安心して、生きているから」
ボソボソとトーストを食べつつ妹に返事をする。
「この通りね」
「だから死にそうっていうのよ」
「毎日寝てはいるから」
「どれ位?」
「平均二時間は」
「それ殆ど寝てないってことになるから」
それ位の睡眠時間ではというのだ。
「やっぱり危ないわよ」
「大丈夫、完成させたらね」
「それからはなの」
「ちゃんと寝るから」
そうするというのだ。
「安心してね」
「全く、プロの漫画家さんみたいな生活してるわね」
「デビューしたいとは思ってるわよ」
「言っても無駄だと思うけれどちゃんと寝てね」
「全部終わってからね」
それからという返事だった。
「そうするわ」
「じゃあまだなの」
「先よ」
そうして普通に寝ることはというのだ。
「あと少しだから」
「完成まで」
「そう、今追い込みも追い込みでね」
「クライマックス中?」
「それが終わったらよ」
「ちゃんと寝るのね」
「そうするから、絶対にね」
こう妹に約束する、そうして朝御飯を食べて登校するが期末テストが終わって消化試合の様になっている終業式までの学校でもだ。
百合は死にそうな顔でクラスにいた、その彼女に友人達が言った。
「あんた死にそうな顔してるわよ」
「お顔の色は土気色だしね」
「髪の毛も酷いし」
「目に光がないわよ」
「何か凄いことになってるわよ」
「ずっとコミケの同人誌描いてるから」
友人達にもその死にそうな顔で答える。
「だからね」
「それでっていうの?」
「何か夏もそうだったけれど」
「あと春もね」
「ゴールデンウィークの時のコミケって言ってて」
「そんな調子だったけれど」
「今もなの」
まさにというのだ。
「同人誌描いてるから
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