アージェント 〜時の凍りし世界〜
第三章 《氷獄に彷徨う咎人》
舞うは雪、流れるは雲@
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題と極秘の赤い判、それと責任者の氏名が載っているだけだ。
「主任研究員ドウェル・ローラン……日付は6年前ね。」
そこそこ名の知れた研究者なら、自身主導のプロジェクトの一つや二つあっても不思議では無い。だがエヴァは、どうにもキナ臭い何かを感じずにはいられなかった。
「これ以上は私の権限じゃ分からないのよね……こうなったらシステムにクラックかけて……」
「そんな事せずとも、直接聞いて下されば宜しいのに。」
「っ!?」
いる筈の無い人間の声に、咄嗟に振り向くエヴァ。そこにいたのは、やはりというかドウェル・ローランだ。しかしその顔に浮かぶのは、普段の穏やかな笑みでは無く、冷笑に近いものだ。
「……いつから?」
「そうですね……あなたが通信を始めた辺りからですな。」
「………そう。」
僅かな沈黙の後、エヴァは無言のままに魔力弾を展開する。一見無防備なドウェルだが彼女は油断しない。なにせ、それなりの使い手だと自負する彼女の背後を、ドウェルはずっと取り続けていた事になるからだ。
「動かないで。1mmでも動いた……と、私が判断したら撃つ。」
一分の逃げ場も無い状況でそう告げるエヴァ。既に回避は物理的に不可能で、魔力による防御も、この距離なら展開される前に攻撃できる。しかし、そんな状況下でもドウェルの冷笑は消えない。
「容赦が無いね。言われずとも動かないさ。……むしろ、君こそ動けるのかい?」
「?………何を言ってッ………!?」
そこまでだった。唐突に意識が揺らぎ、体から力が抜けていくエヴァ。思わずその場にへたり込んでしまい、魔力弾の維持も出来ない。
「ただ傍観していた訳ではないさ。空中散布型の麻酔剤だ。自然分解が早いから使った後の片付けも要らない。便利だろう?」
「…あなたは……何…も……の………?」
自由にならない体で、どうにかそれだけ絞り出すとエヴァは意識を手放した。それに対してドウェルは、ちょっと困った様にこう述べるのだった。
「何者……か。さて、私は何者なのだろうね?」
二日後、アージェント辺境の村、白郷にある暁人のアジトに、招かれざる客が訪ねに来ていた。
「間違いあらへん、ここや。」
自信満々に断言するはやては、既に騎士甲冑を展開している。彼女に付き従う、四人の騎士達もそれは同様だった。
「主はやて、周辺の封鎖が終わりました。」
「ありがとう、シグナム。で、ここからが本番なんやけど……」
長いピンク色の髪をポニーテールに結び、和服をアレンジした様な甲冑を纏った侍風の女性、ヴォルケンリッターの将シグナムとはやてが作戦を確認する。それに割り
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