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魔王卑弥呼
混ざり合う者
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し自動扉が開きフロアーに入る。

 向こうから何かが来た。
(人間?)
 美樹がジッと見つめる。
 一見ただの中肉中背の男だが何か様子がおかしい……

 原因が分かった。
 男の顔が絶えず変わっているのだ、瞬きするよりも速く変わっている。
「きゃっ!」
 麻美が悲鳴を上げる。

「麻美!ここじゃマズいわ、出て!」
 美樹と麻美が表に出る。
 その男がゆっくりと速く迫る。

「こっちよ!」
 麻美は足が遅い。
「あん、もういいわ!」
 そう言って美樹が麻美を抱きかかえて走る。
 凄い速さで走るが男はピタッと追ってくる、やがて路地裏の袋小路に着いた。

「ここなら多少暴れても大丈夫ね」
 麻美を降ろす。
「美樹……あ、あいつは?」
「分からない、けど……悪魔……よね、私の知らない」

「あれがあなたの言ってた……悪魔!」
 麻美は驚きを隠せない、しかし
(私は戦うわ、美樹の話を聞いて決めたんだ!)

「麻美、下がっていて」
 言って美樹が前に出る。
「あなたの事は知らないわ、でも……悪魔よね?」
「違う、助けて、なんでだっ、帰る、外だ、いやだ、どうなってんだ」

 顔が変わるたびに色々なセリフを高速で喋る、しかし美樹は全てを聞き分ける。
(人間じゃないけど悪魔って感じでもないわね、どうするどうする)

 男がゆっくりゆっくりと近付いてくる。
(どうするどうするどうする、私はどうする?)
 男が手の届くところまで来た。
 腕をゆっくりと振りかぶる、その後が速い。

 美樹の顔面に男のパンチが炸裂したように見えた、しかし美樹は腕でガードをする。
「凄い力ね、あなたは……あなた達は被害者なのかも知れない、でももう正当防衛よ!」
 言って美樹が正拳突きを男の顔面に食らわせた……ように見えたが……

 今度は男がガードをする。
「やるわね」
(もう一発食らわせてやる!)
 しかしまたガードされる。
(離れて叫んで砕けさせてやる……訳にはいかない……)
 離れた隙に麻美が狙われるかも知れない。

 男がスッと美樹の胸をつかんだ。
「えっ?」
「久々、気持ちいい、この感触、やりたい、舐めたい、いくら?」
 男の顔が高速で代わる代わる意見を述べている。
 意表を突かれた美樹の動きが一瞬止まる、そして
「このーー、ど!スケベ!」

「ドンッ」と足で突き飛ばす。
「ブーーン」と男が吹き飛びコンクリートの壁に激突した。
(今だ!)
「うぉぉーん」
 美樹が大きく口を開け声にならない声を発する、それは超音波となって男を小刻みに震わす。

 被害者の男達は久しぶりに外へ出て久しぶりに女の胸を触って幸せになりそしてあの世へ行った。
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