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魔王卑弥呼
混ざり合う者
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にこんな感じになるんです」
 もじもじと恥ずかしそうだ。
「私もおんなじだよ」
 そう言ってニコッと笑う、えくぼができる、どうやら気が会いそうだとお互いに思った。

 億ションの一室に安室絵美がクラシック音楽をかけながら椅子に座りグラスの赤ワインを転がしている。
「ああー帰してくれーー」
「家族がいるんだー」
「助けてくれお願いだぁ」
 大勢の声が部屋に響き渡る。

 部屋の床一面には多数の苦悶に満ちた人間の顔が埋め込まれていた。
 もちろん安室が座る椅子の脚も顔の上に乗っている。
 過去の安室絵美は一月前に芸能界を引退していた、その直後に悪魔に食べられてしまっていた。

 ファンレターをランダムに選びその者を床に埋め込む、現在の安室の趣味だ。
 恨み、願い、悲痛、苦しみ、後悔、泣き言、心地よい音楽の中で安室は満足そうだ。

「ボトボトー」
 グラスのワインを床にこぼしてやる。
「ゴボゴボ、ごほっごほっ」
 ワインが口に入り床がむせる、この前埋め込んでやった警備員だった。

 午前2時22分にベッドから飛び起きる。
「怖い怖い、助けて……クチダケ……お前の……執念を……」
 美樹はいつものように悪夢を見た、いつもの大きな大きな黒い男の背中を見て怯えた、しかし今日は夢の続きがあった、自分が大女になり男を殺していた、そして近くの自分の死体を残らず食べた。

「ああーーあぉぉーん」
 窓ガラスが割れる。
 織田美樹の心に変化が起こっていた、そして同時に魔王卑弥呼の心も変化する、織田美樹と魔王卑弥呼の分かれていた心が1つになる。

「ふっふっふっ……なるほどなるほど……お前は私、私はお前……この瞬間に1つだ」
(嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい)
 新しいその者は織田美樹でも魔王卑弥呼でもない混ざり合う者だった。

「麻美そこを右に曲がって!」
「キキキーー」
 赤いスポーツカーが危なっかしく右に回る。
「ちょっとぉ美樹!もっと早めに言ってよ」
 美樹は18才、麻美は20だがお互いに下の名前を呼びタメ口で話す事に決めていた。

「あのパーキングで良いよ」
「はいはい」
 美樹に言われて麻美が駐車する。

 窓からその様子をギロリと安室絵美が見ていた。
「魔王卑弥呼……裏切り者」
 安室が呪文のようなものを唱え始める。
「メーラメラメラメーラメラメラメーラ」
 指を「カモーン」としているかのように動かす。
 床の顔が盛り上がり1つに集まる。
「働いてもらうよ」


 暗証番号が分からない
「透視してよ」
 言われた麻美が透視を始める。
「うん……うん」
 暗証番号を押
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