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勇者にならない冒険者の物語 - ドラゴンクエスト10より -
転生3・忘却、そして・・・
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「バルジェン・・・なんだかしっくり来ないが、それが俺の名前なのか」

「・・・そうだと思う」

「そう・・・か。で、ここは何処だ? 異世界? 地球じゃないのか?」

「ちきゅうってなんだ?」

 小柄な女性に聞き返される。

「地球っていえば地球だろう」

「だから、ちきゅうってなんだ?」

「だから、・・・地球は・・・なんだっけ・・・」

 覚えていたはずの単語が口にする端からどこかに飛んで行ってしまう。

 忘却。それは、呪いの類であろうか。

「俺は・・・地球の、島国にいた・・・? 島国ってなんだ・・・? 東京・・・? とうきょうってなんだ・・・?」

「いや、私に聞かれても困るのだが・・・」

 小柄な女性は困惑する彼を見てより一層困惑しているようだった。
 赤い肌の女性が化粧台に備え付けられたスツールに腰かけて口を開く。

「ここはジュレットの町。お前たちウェディ族がたくさん暮らす町だにゃ。で、ちきゅうってのが世界の名前だったら、ここはちがうにゃ。ここはアストルティアっていう世界にゃ?」

「アストルティア・・・?」

 聞き覚えのあるような無いような・・・。

「とにかく、今は悩んでてもしょうがにゃいにゃ! 食堂に行ってまずは飯にするにゃ!」

 促されるままに、赤い肌の女性、ジアーデに手を取られて部屋を後にすることにした。
 何かのショックで忘れているだけなら、食事をとって落ち着けば思い出すかもしれない。
 そんなはずはないだろうが、今は悩んでいても仕方がないのも事実だ。
 この二人は自分よりは状況を知っているはずだ。ならば、今は彼女たちの話を聞いて理解することから始めなくてはならなかった。





 部屋を出ると、そこはロビー兼食堂になっていた。
 どうやら建物自体は円形に近い作りで、部屋とロビーは直接繋がった造りになっているらしい。
 ジアーデはカウンターでグラスを拭いている青い肌の女性に軽く挨拶をすると、大きめの皿にサラダと30センチほどの大きさのトカゲの丸焼き、ポテトの山が乗った料理と少し白く濁った透明な液体の入ったグラスを受け取る。
 バルジェンの方を見た女性は少し驚いたような顔をしたが、すぐに別の料理の乗った皿を差し出してきた。
 彼に差し出された料理は、何かをすりつぶして固めた「山」だ。それ以外には何も乗っていない。
 これは何だろう。
 不思議そうに眺めていると、ジアーデが笑いながら教えてくれた

「それはポテトとコーンをすりつぶして練り上げたポッチャデコーンっていう料理にゃ。病み上がりにいいにゃ」

 よさそうに聞こえなかったんだが・・・。ここではこれがおかゆ替わりなんだろうか。
 一緒に渡された液体を見る。
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