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勇者にならない冒険者の物語 - ドラゴンクエスト10より -
転生3・忘却、そして・・・
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いが、君は誰だ?」

「!?」

 驚いた小柄な女性が右手にこぶしを握り締めてフルフルとわななきながら声を震わせる。

「き、き、きさまは・・・どうして目が覚めて早々そういう冗談を言うか!」

「いや、まてっ! 知っているんだったら教えてほしいだけだ! 俺は・・・誰だ?」

「は!?」

「ここは・・・どこだ?」

 小柄な女性は青い顔をして固まっていた。
 そんなにショックだったのだろうか。

「おっすー、チョウキー! さかなくんは目覚めたかにゃ〜?」

 赤い肌、長い黒髪にあか抜けた笑顔の美人。身の丈は170センチくらいだろうか。背には穂先が十字になったヤリを背負っており、額には二本の角が・・・。

「鬼?」

「ふぎゃー! モンスターじゃないにゃ! 出会い頭になんて言うかなこの恩知らずは!」

 怒って甘殴りしてくるとわかる。身の丈は自分も一緒くらいか。
 ぽかぽかとたたかれながらも、彼は必死に訴えた。

「ちょちょ、ちょっとまってくれ! 君たち本当に何者なんだ!? というか、俺は何でこんなところで寝てたんだ!?」

「大怪我してぶっ倒れたからに決まってるからじゃにゃいか! にゃーにをいまさら・・・」

「ちょ、ちょっと待ってくれ二人とも!」

 小柄の女性が間に割って入ってくる。

「お、おぬし、船の上でのことは覚えておらぬか? 航海に出るときに私にいきなり恋文を押し付けてきたではないか?」

「いや、何の話だ・・・?」

 その場に力なく頽れる小柄な女性。
 何かを感じ取ったのか、赤い肌の女性もまた叩く手を止めて顔を覗き込んできた。

「んーこれってひょっとして・・・記憶消失?」

 小柄な女性が飛び跳ねるように顔を上げる。

「それを言うなら記憶喪失だ!」

 あーそれそれーっと、あか抜けた笑顔で応じる赤い肌の女性。

「でも、どっちにしてもあたしらのことも全く覚えてにゃいって事だね! 大変だね!」

「どうして貴様はそんなに楽しそうなんだ、ジアーデ!!」

「でも覚えてにゃい物は仕方がないにゃ。今を大事にするべきにゃ」

「意味が、状況が解っているのかお前は!」

「そんにゃこといわれてもにゃあ〜。あたしはチョウキほどこいつに固執してにゃいしにゃ。そもそも赤の他人だしにゃあ」

「赤の他人とは・・・!」

 と、抗議しようとして、小柄な女性ははっとした表情でその場に固まった。
 大丈夫だろうか?
 次の瞬間には飛び起きるように動き出して、彼が横になっていたベッドの脇の小さな棚に手を伸ばし、小さな木片のついたネックレスを取り出す。

「バルジェン、というらしいぞ、おぬしの名前は」

 と、彼に向き直って言った。
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