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キコ族の少女
第26話「お気に入り登録」
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、挨拶もそこそこに甲高いエンジン音を響かせながら逃げるように走り去っていった。


「……随分と可愛らしい歓迎ですね」


 名前は忘れたが、確か犬を使役する男の操作系能力者がボディガードの中にいたから、これは彼の仕業だろう。
 変装中はフードの中に隠れていたテトが、今は俺の足元でドーベルマン相手に全身の毛を逆立てながら威嚇し返しているのを眺めつつ、余裕のある風な台詞を吐いてみる。


「こいつらに囲まれて、そんな台詞を吐ける嬢ちゃんは少し可愛くないな」


 門を支える柱の陰に薄っすらと感じた気配が、急に濃くなるとともに額に豆のようなポッチをつけた顔の濃い長髪の男が、ラフな格好に似合った軽い口調で登場した。
 そして、彼の顔をトリガーとして俺の記憶から、ノブナガに首を撥ね飛ばされる彼の姿や、女に股間を踏まれて喜ぶ姿などが閃きのように浮かび上がった。


「ドMっぽい人」
「ブッ……」
「……言っておくが、俺にそんなケはないからな」


 蘇った記憶に乗せられてポロリと零れた独り言に、隣に居たエミリアは何のツボに入ったのか分からないが、口を押えて防ごうとしたものの間に合わずに吹き出した。
 一方、俺にドMと呼ばれた男は一瞬だけ唖然とした表情を浮かべたものの、子供の挑発と受け取ったのか大人の対応として少し引きつった笑みだが、一言注意を言ってから「ボスの元へ案内すると」傍に別のドーベルマンを従えてから屋敷に向けて歩き出した。

 さすがに失礼過ぎたので失言であったとして謝罪をしてから、未だに口を押えて何かに耐えているエミリアを促しつつ、足元で威嚇を続けているテトを抱き上げてから彼の後を追った。


「ダルツォルネだ」
「ユイ=ハザマです」


 エミリアからの口添えがあったからか、門でのやり取りによる結果なのか分からないが、屋敷へと通された俺は、そこでエミリアと別れて執務室のような場所に通されると、厳ついオッサンと侍女二人が出迎えてくれ、先の発言となった。
 目の前の厳ついオッサンの顔と名前を脳が理解した瞬間に、埋もれていた記憶が閃きのように浮かんでくるが、今度は意識して口を閉じることで門の時のような失言を抑え込むことに成功した。


「さて、早速だが眼帯を外してもらおうか」
「……分かりました」
「……ほう」


 抱えていたテトを足元へと置くと、右目を隠していた眼帯を外して“ダイヤの瞳”と呼ばれているキコ族の特徴の一つを目の前にいる三人へと晒した。
 ダルツォルネは感情のこもっていない溜息のような一言だけで済ませたものの、両脇に控えていた侍女の二人は大きく目を見開いたりして素直に驚きの感情を表した。


「確かに記録通りの特徴を有しているようだな」
「……」
「調べ
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