暁 〜小説投稿サイト〜
キコ族の少女
第25話「黒歴史の新たな1ページ」
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ようと思う。

 こうなったのは、俺とエミリアの間で結ばれた契約に則した行動である。
 
 話は少し逸れるが、両親の了承があって実力も備えているとはいえ、中学生くらいの女の子が一人で街に住めるのかという疑問を俺は持っていた。
 だが、彼女は両親の伝手を利用して天空闘技場の近くに屋敷を構える資産家の世話になっているそうで、資金面についても、娘の相手をしてくれれば融通するという事で苦労はしていないという話を聞かされた。
 やはり、この世界でもコネと権力は強力だと思い知らされて、9歳で闘技場に潜って金を稼いでいた自分との格差に泣きそうになったり……。

 話を戻そう。
 契約内容は要約すれば、「ユイ=ハザマは、エミリア=サローニの庇護下に入り仕事のサポートを行う」ということになり、仕事というのは資産家の娘―――名前はクレアと言って、エミリアと同い年だそうだ―――の相手をすることだ。
 それで何故、俺が彼女に髪の毛をセットされるという状況になるのかというと、権力者の娘に会うのだから見咎められないように身嗜みを整える為であり、時折だがせがんでくるクレアの為に練習台。
 なんて、それらしいことを言っているが、彼女の表情を盗み見るに単純に俺という“可愛い女の子”を愛でて楽しんでいるようにしか見えない。

 ふと、自然と自己を可愛いと評価するナルシスト的な思考に、自分のことながらドン引きしてしまう。


「ほら、頭を動かさない」
「ぶふぅっ!?」


 ドン引きからの落ち込みで自然と俯いていた俺の頭を、エミリアは両頬を挟むようにして持ち上げるものだから、女の子が出してはダメなような変声が出てしまう。
 そんな変声を無視しつつ、彼女は俺の髪を綺麗なストレートへとセットし終えるとベットの上に置いてあったモノを手に取って


「はい。次はこれね」


 と、笑顔で差し出し……いや、問答無用で俺の膝の上に置いた。
 視線を下げれば、グレーのロングパーカーにデニムのショートパンツ、そして黒のソックスが目に飛び込んでくる。
 色々と言いたいことがあるが、ここで拒否しても契約をネタに結局は着ることになるのは分かっている。
 しかし、もう少し……


「もう少し、肌の露出を抑える服ってありませんか」
「これでもすごく減らしたんだよ。これ以上したら、普段と変わらないよ」
「いえ、それでいい―――」
「だ〜めっ」
「……はい」


 さて、ここまでの流れで分かっているかと思う。
 今日を以て、4か月にも及ぶ長い入院生活を終えて俺は退院することになった。
 もちろん、左腕を含めての怪我も完治してるので、健康体そのものである。医者からは造血剤の常用はしないようにキツく言い渡されているが……まあ、状況次第かな?


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