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キコ族の少女
第23話「第三の―――」
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たから、もしやって思ったの」
「??」


 念能力というのは十人十色であって、それだけで俺が自分の種族について無知であるとされる理由が分からず、思わず首をかしげてしまう。
 そんな反応に、エミリアは近くにあったペンを掌に載せると注視するように言いながら、俺の方へ見やすいように差し出してくるので、反射的に“凝”で彼女の手を見ると、オーラが微かに集まり始めたと分かった次の瞬間、フワリとペンが宙に浮くと、プロペラのようにゆっくりとだが回転し始めた。
 すると、彼女の掌辺りから微かな風が俺の頬を撫でてくるので、やはりエミリアは対戦時に予測した通り“風”を使用する念能力であると確信する。
 ところで、これを見せられても俺としては無知であるという理由にはならないのだが……


「キコ族はね。先天的に、系統とは無関係に“自然”の一部を念能力として使えるの」
「え?」
「どうしてなのかは知らないけれど、現在のところは“先祖代々から自然崇拝を信仰してきた為”っていう仮説が一番人気かな」
「……」
「で、念が使える人は先天的に持っている力を派生させたり、強化したりするのが楽だし、ベストなんだけど……」
「私には、その様子が見えないと?」
「そうなんだよね。匂い的にはユイちゃんは水関係の能力がありそうなんだけど……」


 ドクンッ


 エミリアの発言に、心臓が大きく跳ねた。そして、無意識に自身の右手にある指輪を隠すかのように左手で覆う。
 ノブナガと能力開発の相談に乗ってくれたシャルにしか教えていない三つ目の念獣……いや、念獣と呼べるかも怪しいコレは、彼女の言う通り水に関係しているモノだ。そして俺の切り札であり、能力の基礎でもある。

 普通なら、出会って数日の相手に自身の弱点ともいえる能力を見せるべきではないのだろう。
 だが、彼女も持つ知識は俺の知りたかったモノで、ハンターにならなければ得られないと諦めていたモノだ。それが代償を支払えば、今、ここで、得られる。
 しかし、代償は自身の切り札であり弱点でもある念能力の開示。

 命を懸けてまで欲しいモノか?
 だが、この機会を逃して、はたして次回があるのか?


「ユイちゃん?」
「……見て、貰いたい、事が、あります」


 俺は、側にあった果物ナイフを手に取った。

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