第19話「出会い-2」
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「……………」
目の前の紙を見て、俺は思考の海に沈んでしまっていた。
差し出された二枚の紙の内、俺の情報が載っている一枚は理解できる。
戦いにおいて相手を知るというのは重要な事なのだから、気分が良い訳ではないが根掘り葉掘り調べられてしまう事は理解できる。そして、当然ながら自身が特異な存在であることは理解しているので、シャル達から情報漏えいを防ぐ手段や対策を教えられている。
掲載されている情報を見てみたが、名前……と年齢以外は全て出鱈目(俺自身も知らない)なので、この情報から俺の事を調べても確実に徒労に終わるだろう。
分からないのが、依頼内容が書かれている一枚の方だ。
保護ではなく捕獲という誘拐等を暗に認める依頼からして、マトモな依頼主ではないだろうし、これを掲載できるサイトもマトモではないだろう。
ところが、捕獲依頼とあるのに注意事項として「生きたまま」という記述があることや、成功報酬が4億という法外な値段から俺を珍獣や希少種系として捉えているのは分かるのだが、依頼の詳細に対象がキコ族であるという記述がないのが分からない。
幻影旅団の関係者として狙われているのかとも思ったが、皆とは流星街で別れて以来、電話以外で接点はないし、仮に盗聴されても俺の現状報告に関する話ばかりで旅団に繋がる話はしていない。
横流しされるのを警戒しているかと思ったが、報酬を見れば「珍しい存在です」と言っているようなものなのだから意味がないと思う。
なら何を以って、俺に対してこのような法外な懸賞金をかけたのか?
そして、「ユイはキコ族である」という前払いの情報を渡してまで俺と接触し、更に狙われているという情報を提供してくる彼女―――エミリアの真意は何なのか?
ちらりと彼女に視線を向けても、いつの間にか頼んでいた紅茶を楽しんでおり、完全に俺の反応待ちという姿勢とっているので、懸賞金目当てではないとは思う。てか、それが目当てなら警戒させるような今の行いはしないで、さっさと捕獲して渡ししまえばいいだけである。
テトが初対面の相手に対する軽度な警戒を少し和らげているのを見るに、隠せるほどの達人ではない限り敵意や悪意がないはずだ。というか、それほどの実力があるなら云々……。
狙われていることを教えてくれるという事は、俺を捕獲されると不利益になると思っているのだとして、エミリアは「ユイ」または「キコ族」から何かを得たいという事なのか、捕獲依頼を出している依頼主が利することを防ぎたいのかということになるが、情報不足の現状では全く分からない。
ならば、相手も反応を待っているようだし、直球に聞いてみるのが一番だ。最初の会話で言葉遊びはしないような空気を作ったし、何となくこちらに好意的なようだし……。
「……目的は
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