第17話「いざ“逝かん”、200階へ」
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定の選手を贔屓にしちゃいけないんですけど、80階で初めて見た時からファンになっちゃって……」
「えと……その……」
「ダメ、でしょうか?」
鍵を両手で握りしめつつ、可愛く首を傾げてお願いしているように見えるが、俺からすれば部屋の鍵を人質……もとい物質にしての要求に見えてしまう。
これを、受付のお姉さんが意識してなのか無意識なのか微妙に気になるところだ。
とはいえ、相手からは悪い感じを受けないし、野生の勘とでもいうのか悪意に敏感なテトも特に警戒していない相手からであれば、握手程度で喜んで対応しよう。ただし、ヒソ---変態とロリコン! お前らは駄目だ!!
「いえ、大丈夫ですよ」
「きゃあーっ、ありがとう!」
受け取るために出した手を握手用に変えると、受付のお姉さんは興奮した顔で俺の手を握って上下に振りまくる。
怖くなるくらい興奮している様子に少し腰が引けてしまうも、数秒だけ我慢すれば済むのだと自分に言い聞かせて耐え忍ぶ。
しかし、こういう状況で俺が抱く希望といううのは容易に踏み砕かれる事が多いというのを、最近になって学習してきた。
案の定、興奮するお姉さんの後ろから複数の声が---俺的には悪魔の声---聞こえてくる。
「あーっ、ズルイ!何、貴女だけ握手してもらってるのよ!」
「そうよ、そうよ!私達だって我慢してたのに!!」
「受付の時間帯はクジで決めたんだから、文句ないでしょう?」
軽い口論をしているのに、彼女等の視線は握手している手に向けられている。
所謂“羨望の眼差し”と呼ばれる彼女等の視線は、なぜか旅団の皆から受ける重量のある視線と同レベルで冷や汗が背中からタラタラと流れる。
こういう状態になった場合は、一つの行動しか取れないと俺は理解している。それは……
「え、えと……私でよければ、構いませんから……」
「本当ですか!?」
「やったーッ!」
ハッハッハッ。人間、諦めが肝心だよね!
受付のお姉さんsの圧力に、テトは俺の服の中へ既に避難済みで、俺は流されるがままに握手へ答え続けていったのだった。
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ユイが受付の女性に揉みくちゃにされる数時間前、闘技場の観客席にいた一人の男はリング上にいる少女に釘付けになっていた。
自分より倍以上ある体を持った男を、一蹴りでリング外へ吹き飛ばすという異様な光景を作り出したから……
男の周囲にいる観客であれば、その理由に当てはまっているだろう。
しかし、男が心惹かれたのが少女の素顔だった。
観客の殆どが、派手に吹き飛ばされる選手に目が行ったために気づいたものがいないだろうが、勢いよく蹴り飛ばしたためか目
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