第16話「油断大敵、時既に遅し」
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笑いしながら待っていると、誰かが電話を取ったかのような雑音の後に予想外の声が聞こえてきた。
『久しぶりだな、ユイ』
「フランクリン!?」
俺の好きなりょ(以下略)の声に、思わずベットに座っていた身体が弾んだ。
約半年ぶりの声は、いつもと変わらなくて懐かしさで顔が綻ぶ。
『悪いな、お前の見送りにいけなくて』
「ううん、大丈夫だよ。それよりも珍しいね、皆が集まってるなんて」
先ほどの騒ぎから“凝”を耳にして聞き耳をたてていたのだが、ノブナガの怒声の合間に微かに知っている声が聞こえてくる。
『ああ、ちょっかいかけてくる奴等に挨拶しに行くところだからな』
「そうなんだ。気をつけてね? 無駄な心配かもしれないけど……」
挨拶が何の隠語なのかを知りつつも無事を願う言葉を掛けるが、一人でそこらのマフィアなら潰せるほどの実力を持った皆が怪我やそれ以上の事になるなんて微塵も思っていない。
俺の言葉から、そんな内心を汲み取ったのだろうフランクリンは軽く笑い声を上げた。
『お前も、大丈夫だと思うが無理はするなよ。見た目“だけは”良いんだからな』
「何言ってるの。見た目“だけは”じゃなくて“も”だよ」
『……フッ』
「あっ!今、笑ったでしょ!?」
『さぁな?』
「ううん、絶対に笑ったよ!」
軽いジョークを含ませた話を笑いながら言葉を交わしていると『代わって』とマチの声が聞こえて、しばらくすると何事もなかったかのような彼女声が聞こえた。
『急に離れて悪かったね』
「えと、お疲れ様?」
騒ぎの切欠が切欠なために、なんと声を掛けいいのか分からないから、当たり障りのない労いの言葉をかけるだけに留めておく。
そして次回の電話する日時を決めた後、別れの言葉を告げて俺は携帯の“切”ボタンを押した。
すると、電話が終わるのを待っていたのか、テトは電話を切るのとほぼ同時に俺の肩に飛び乗ってきて顔を摺り寄せてくる。
「もう、この愛い奴めっ…………さて、負けに行きますか」
テトの頭を軽く撫でてから立ち上がり、近くにかけてあった着慣れたコートを身に纏う。
今の時点でも莫大と言って良いほどの所持金だが、返金分やキコ族調査による出費を考えると後一桁ほど多いほうが良いだろう。
とはいっても、180〜190の階を数回往復すれば直ぐに溜まる額だから、そこまで大変なことではない。
「問題があるとすれば、どうやって負けることかな?」
そんな事を思いながら、俺はテトを肩に乗せたまま部屋を出て行った。
100階を越えると、選手の数が一気に減る。
理由は単純、ここまで上がれる
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