第13話「ユイ=ハザマ、9歳です」
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か……場外がざわめき始めた。
「おい見ろよ。ガキだぜ」
「それも女じゃねぇか」
「おいおい、嬢ちゃん! ここは遊び場じゃねぇぞ!!」
「早くママのところに帰って、おっぱいでも吸ってな!!」
下品な野次と、下品な笑い声が会場を包み込む。
それは、俺の相手となる目の前の人物も例外ではなく。
いかにもワルやってますと言っているような、無駄に貴金属をつけて装飾された皮のジャケットを着たチャラチャラ(死語)した格好の長身の男も相手が俺と見るや……
「おいおい、俺の相手はこんなガキンチョかよ」
「……」
「どうした? 今更怖くなってきたか? 逃げるんなら今のうちだぜ?」
「……」
無言を貫く俺に、男は延々と安い挑発を繰り返す。
それに同調するように、観客も声を上げて次々と言葉を投げつけてくる。
「兄ちゃん、運がいいな!」
「あんまりイジメるなよ、兄ちゃん!」
「そうそう、優しくしてあげろよ! お・に・い・ちゃん!!」
「きめぇ〜!!」
審判員の人間が、会場の雰囲気に思わず溜息を吐くのが見えた。
俺もそれに釣られて小さく溜息を吐くが、どうやら相手の男の癇に障ったようで……
「……おい、嬢ちゃん。溜息とはいい度胸じゃねぇか」
「……」
「はんっ、その澄ました顔をすぐに崩してやるよ」
といいながら目つきを鋭くし殺気を放ってくるが、残念ながら俺にとっては蚊に刺された程度で相手の強さがぜんぜん伝わってこない。
そればかりか、自分の弱さを曝け出しているようで残念な感じになる。
審判員は、会場が若干落ち着いたのを見計らってルールを説明し、開始の合図となる右手を上げる。
そして……
「――それでは……始め!!」
「覚悟しな!!」
合図と同時に、こちらへ突進してくる男。
彼的には全速を出しているつもりなのだろうけど、こちとら数十倍も早い敵と戦っているから遅いことこの上ない。
ステップを踏むようにトンッと軽く横へ飛ぶことで攻撃を回避しながら、足を引っ掛けて相手の転ばせる。
「どわぁ!?」
男的に突然消えた俺と、急にバランスを崩した自分の体に情けない声を出して、受身を取れず盛大な音を出して地面と派手なキスをする。
そんな男の脇に移動して、俺は某サッカー漫画の主人公のようにワザとらしく足を大きく後ろへ持っていくと
「バイバイ、おニイさん♪」
「まっ……っ!!」
0円スマイルを浮かべつつ、男の腹部へ蹴りを叩き込んだ。
俺の蹴りを何の構えもなく受け止めた男は、体を”く”の字に曲げてリングから場外へ、場外から観客のいるベンチへ吹っ飛んでいった。
いきなり飛んできた選手
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