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真田十勇士
巻ノ百九 姉妹の絆その一
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     巻ノ百九  姉妹の絆
 江戸城の大奥において秀忠の室は正妻であるお江の方だけだ、律儀者でしかも父とは違い女色には淡白な秀忠が妻は彼女以外を欲しなかったのだ。
 そのお江がだ、今大奥に置いて不安にかられている顔になっていた。
 見れば姉によく似ているがその姉よりも遥かに穏やかな顔立ちだ、その彼女が整った顔御を難しくさせて周りに聞いていた。
「では大坂はですね」
「はい、相変わらずです」
「姉君は勘気を募らせてばかりとか」
「とかく大御所様に腹を立てられ」
「周りも同じお気持ちだとか」
「よくありませぬ」
 そう聞いてだ、お江は目を閉じて言った。
「それは」
「全くです」
「あのままですとやがてはです」
「大御所様も捨て置けず」
「厳しい断を下されます」
「妾としてはです」 
 お江は周りに自身の考えも述べた。
「茶々姉君には末永く暮らして欲しいのです」
「お初様もそう思われていますね」
「先日も奥方様に文を送られていましたが」
「左様でしたね」
「はい」
 その通りだとだ、お江は周りに答えた。
「お初姉君も」
「だからこそいつも動いておられます」
「この江戸と大坂の間を動き回り」
「何とかです」
「茶々様をお助けしようと」
「そうだというのに。あの方は」
 これ以上はないまでに悲しい顔になってだ、茶々はまた言った。
「何故でしょうか」
「今もですね」
「勘気を起こされてばかりで」
「天下は豊臣家にあると」
「そう言われていますね」
「天下は変わりました」
 茶々がどう思おうがというのだ。
「それは既に」
「左様です」
「それはもうです」
「天下は変わりました」
「徳川家のものとなりました」
「もうそれは変わりませぬ」
「そうだというのに大坂から退かれず」
 幕府がその地さえ手に入ればいいと思っているその地にだ。
「天下人だと言われていますね」
「右大臣様こそがと」
「今も尚」
「右大臣殿は娘婿です」
 お江にとってだ、秀頼は紛れもなくその立場だ。
 それ故にだ、お江は情もあり言うのだ。
「悪い様にはしませぬ」
「よき国にはいってもらい」
「そうしてですね」
「平穏に暮らして頂く」
「そうなって頂きますね」
「はい」
 その通りだというのだ。
「私が何があってもその様にします」
「あのお話は」
 女の一人がお江に言ってきた。
「大御所様と茶々様の」
「あのお話ですね」
「どう思われますか」
「願ってもないお話です」
 すぐにだ、お江はその女に答えた。
「そう思います」
「それで全てが丸く収まる」
「これ以上はないまでのお話です」
「ですが」
「はい、茶々姉様はどうしても」
「左様ですね
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