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Darkness spirits Online
第5話 帝王の影
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ぁあ、これは失礼。私は別に、あなた方を悪く言うつもりなどないのですよ。むしろ、素晴らしい戦いを見せて頂けたことに感謝しているくらいなのですから」
「さっきの……鎧騎士達との戦闘か」
「ええ。生身の兵隊が死力を尽くして、『甲冑勇者(アーマードブレイブ)』を打ち破る。実に美しい話ではありませんか。おかげさまで、私の最期を飾る英雄譚のためのデータも、十分に揃いましたよ」
「……?」

 最期を飾る英雄譚。それが意味するものを見出せず、トラメデスは目を細める。一体、何をしようというのか……。

「もう、この世界に用はありません。じきにログアウトボタンも復活するでしょうし、あなた方も引き上げて、自分達の華々しい戦果を報告するといいでしょう」
「……俺達が逃がすと思うか。解析班に掛かれば、お前がどこからログインしているかなんて簡単に調べられる。これ以上お前が何かをする前に、捕縛することくらいわけはない」
「困りましたね、私を誰だと思っていらっしゃるのですか? サーバーに偽の情報をばらまき、そちらの捜査を撹乱することなど――『DSO』から『甲冑勇者』をコンバートするより、遥かに容易いのですよ」
「く……!」

 一方。キッドは解析班との連携で、現実世界のギルフォードを確保しようと考えていたが――すでにサーバー上には、彼の手が回っているようだった。

「とはいえ、FBIの解析班が侮れないのも事実。あまり長居していては、こちらのデータを取られて面倒なことにもなりかねませんし……ここは、早々に引き上げるとしましょうか」
「行かせるかッ……ぐ!?」

 それでも、この男の思い通りにさせるわけにはいかない。キッドはその一心で、背を向けたギルフォードに飛び掛かる。

 ――だが、ギルフォードはキッドの方を見向きもせず。片腕一本で彼の首を掴み、吊るし上げてしまった。
 リアリティ・ペインシステムが生む、首を絞められる感覚が彼を襲う。

「あまり勘違いしない方がいい。私はあなた方から逃げているのではありません。あなた方を、見逃して(・・・・)いるのですよ」
「ぐあッ!」
「アー坊! ……!?」

 やがてギルフォードに投げ捨てられ、キッドの体が力無く墜落していく。それを受け止めるトラメデスは、鋭い眼差しでギルフォードを睨み――同時に、言葉を失った。

「そう。私は、この仮想世界の創造主にして……(GOD)。その力を以てすれば、如何なることも可能なのです。例えば……このように」

 その言葉と共に、ギルフォードがパチンと指を鳴らした瞬間。
 周辺の砂煙は、突風に煽られたかのように吹き飛ばされ――キャンプ地の全貌が、一瞬にして露わになった。

「……!」
「あなた方を除く、全てのプレイヤーの意識を刈り取る――とか」

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