第21話 罪と罰
[2/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
――伊犂江グループに関する情報は、上層部の検閲が入るだろう」
「そんな……!」
「金はいくらでも稼げるが、金はを稼ぐには信頼と名声が必要。ゆえに伊犂江グループは手段を問わず、自らの汚点を隠滅することに固執したのだ」
自分の預かり知らぬところで、進められていた大人達の暗躍。アレクサンダーの話からその一端を感じ取り、Rは顔を顰める。
「……そんな彼らに正義を売ったFBI、ではあるが。それでも全てを喪った私にとって、最後の居場所だった。せめてもの義理立て……というわけではないが、すでにバッジは返上している」
「……!」
――そして。アレクサンダー自身は、すでにFBI捜査官の役職すらも返上していた。彼の胸から、有るはずのバッジが失われていることに気づき、Rは瞠目する。
「今の私はもう、何者でもない。だが……そんな私でも、パーティに浮かれた連中の警備を掻い潜り、人一人を始末することくらいは容易い」
「……そんなことはさせないッ!」
アレクサンダーの言葉が全て真実であるという保証もなければ、これから彼がやろうとしていることが、本気であるとも限らない。
だが、少なくとも。彼をこのままにしておくわけにはいかない、というのがRの判断だった。
Rは拳を構え、力尽くでもアレクサンダーを制するべく向かっていく。
「――シュッ!」
「く……!」
そんな彼に対し、元FBI捜査官は――手にしたダガーナイフを、容赦なく突き立てる。空を裂くように閃いた刃は、あの仮想世界とは比にならない鋭さで、Rに襲い掛かってきた。
速さそのものは、この一閃の方が劣る。だが「甲冑勇者」ではなくなった現実世界の少年にとっては、ベリアンセイバーにも勝る俊速の刃だった。
Rは自身の反射神経を駆使し、上体を翻して間一髪刺突をかわす。だが、アレクサンダーはその挙動を先読みするように――ダガーナイフを振るいながら、体を半回転させ後ろ回し蹴りを放った。
「ぅがッ!」
それに反応しきれなかったRは、直撃を浴びてしまう。顎を蹴り抜かれた彼の体は、一瞬浮き上がると――糸が切れた人形のように、どしゃりと音を立てて地面に落ちてしまった。
仰向けに倒されたRは、脳を揺さぶられ意識が混濁する中――自分が何としても止めねばならない相手を、懸命に視界に捉えようとする。
「……やめておけ。元捜査官の私に、現実世界の戦いで勝てるはずもないだろう」
「ぐっ、ぁ……!」
「あの時の『答え』を聞くために、君の記憶を残していたようなものだったが……もう、その必要もないな」
「……!」
そんなRを見下ろし、もはやこれ以上の戦いは無意味と判断したのか。アレクサンダーはダガーナイフを懐に収めると、踵を返してしまった。
「
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ