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王道を走れば:幻想にて
第四章、その2の2:小さく、一歩
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「此の期に及んで否定の意見を出すからには、それ相応の考えがあるんでしょうね?私の熱意を打ち砕くほどの、強い考えが」
「・・・・・・・」

 反駁を口にした者は閉口して視線を逸らす。他の多くの者達も同様であり、唯一、執政長官とブルーム卿だけが彼女に視線を送っていた。

「殿下」
「なんでしょう、レイモンド」
「・・・いや、姉君に大分似てきたと、思いましてな」
「っ・・・そうですか」

 王女は瞳の凄味を大分緩めて、その言葉の意味を咀嚼するように口を閉ざす。レイモンドはそれを常の冷静な目で見遣り、周囲を窺った。

「他の者はどうだ?何か意見があるならば言っておけ」
「・・・殿下、一つだけ聞きたいのですが」
「なんでしょうか、ブルーム卿」
「仮にです。仮に貴方が信じた王国の臣民が、幾人でもいいのですが・・・我等を、王国を裏切って、敵に利するような真似をした場合には・・・その者達を粛清して構わないのでしょうか?」
「き、貴様、ブルーム!!」

 円卓の僅かな者達がはっとして声を漏らした。一手に視線の集中を引き受けたブルーム卿は政を考える為政者の一人としてではなく、本職である、マイン王国大将軍としての厳粛で鋭い目付きをしており、それを乱れる事無く王女に向けている。

「殿下、もう一度聞きます。粛清して構いませんね?」
「・・・・・・・・・そうならない事を、私は祈るだけです」

 言及は避けた。だがその言葉の裏には、裏切り者の処罰も止むを得まいとする王女の教育の声が隠れていた。ブルーム卿は一つ頷いて執政長官に言う。

「レイモンド長官、私は王女の意見に賛同致します。民草に運営を委託するのであるならばその機関の設立に協力致します」
「・・・但し書きが必要だ」
「機関が暴走した暁には、その責任は発案者である王女殿下には帰属せず、賛同者の私に帰属致します。そして私はそれの速やかなる鎮圧の責務を負います。それを認めていただきたい」
「・・・仮に暴走が起こった場合、鎮圧するまで辞任も自刃もするでないぞ?良いな?」
「無論です」

 レイモンドは鷹揚に頷いて、円卓の老人らを、宦官の謗りを受ける王国の重臣達を見据えた。

「諸君、もう一度聞く。私の考えに王女殿下とブルーム卿の修正を加えた案について、他に意見したい者は?」
『・・・・・・』

 再度の無言が満ちる。鼻を一つ鳴らしてレイモンドは議長として決定を下す。
 
「では、この議題の結論は私とブルーム卿の裁量の下、国王陛下に奏上するとしよう。今日中にだ。詳細は後日の議論で詰めるとする。分かったな?」

 老人達は異議も賛同も唱えない。言及を避けようとする意思だけが王女には伝わってきた。彼らの狭量さを無視するかのように執政長官が次の議題を読み上げる中で、
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