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絶対将棋
絶対将棋
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大場はしばらく目をつむって精神統一したあと飛車先を突いた。
「先手2六歩」
 時計係が棋譜を読み上げる、大盤では解説の女が両対局者を紹介している。

「大場直子さんは居飛車党で切れ味の良い棋風、AVビデオは50本以上に出演、スカトロプレイが得意です」
 大盤解説の声は対局者にはほとんど聞こえない、微かに何か言ってるな?程度である。

「続きまして後手番になりました篠原水樹さんです、アマチュアながら腕前はプロ級と言われています、得意戦法はノーマル四間飛車です、凜とした風貌から女侍と呼ばれています」
 局面は水樹が得意の四間飛車、大場が居飛車穴熊だった。

 大盤解説場では女が聞き手、元奨励会員のアマチュア強豪が解説を担当していた。
「大場さんが居飛車穴熊ということで……」
 女が聞く。
「大場さんは急戦調の将棋が多いんですけど……以外な感じですね」
 男が答える。
 局面は水樹が押していた。
「すいません、ちょっと……」
 大場が立ち上がる、お手洗いに行くのだろう。
「大場さん、スマホを置いていってもらえますか?」
「えっ?……スマホを……」
 今やスマホのアプリはプロ棋士よりも強いのだ。
「わ、私がカンニングをするとでも?」
 水樹はニッコリとうなずく。

 結局、大場は渋々スマホを置いてお手洗いに行った、戻ってきた後も局面の差は開く一方だった。
「ま、負けました」
 大場がぐったりと頭を下げた、後4人で1000万円である、水樹は自信に満ち溢れていた。

「まで、100手を持ちまして後手の篠原水樹さんの勝ちです」
 時計係が告げる。
 2人目3人目と男2人を倒す、残りは女2人だ。
「まずいな……」
 スタジオの隅で見ているクーだ。

「よろしく篠原さん」
 水樹の前に座る女、この中年の女も水樹は知っていた。
 大場と同じく元女流棋士で現在はAV女優のはずだ、女優の波瑠に似ている。
「こちらこそ宜しく牧村さん」

 先手は水樹だ
「よろしくお願いします」
 2人は同時に挨拶をする。
 水樹はしばらく目をつむり精神統一をする、そしていつものように角道を開け振り飛車を目指す。

「あなたが振るなら私も振る」
 先手の水樹が飛車を振るのを見て牧村が言う、もっともこの牧村は相手が振ろうが振るまいが何時も飛車を振るのだ、生粋の振り飛車党だった。

 戦型は相振り飛車だ、水樹が向かい、牧村が三間に振っている。
「水樹さん、私はね、貴女と同じようにAVデビューを賭けて対局をしたのよ」
 天上を見上げながら牧村は感慨深げに語る。

「ふぅ……」
目をつむる。
「相手は貴女がさっき倒した大場よ、私は負けたわ、大場はね、対局中に何回かお手洗いに行ったのよ、そして帰ってくるたび
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