ターン81 邪魔の化身とラスト・『D』(邪)
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ーポレーションが睨みをきかせているおかげで少しはマシになったらしいが、僕が子供時代のあの町の治安と民度はそりゃあもうひどかった。そんなところに母親を事故で亡くしたケーキ屋の息子だなんて差別点の塊みたいなガキが放りこまれたもんだから、常にターゲットを探していた連中からしてみればさぞかし鴨がネギ背負ってきたように見えただろう。親無しだの片親だのケーキ屋だのと散々にいじめられ馬鹿にされ、それでも生きるためにもがいているうちにめきめき鍛えられて、喧嘩ばかり強くなっていったものだ。あの時は特に意識していなかったけれど、毎日のように喧嘩騒ぎを起こしては素手だったりその辺の石ころや木の枝だったり、あげくの果てには工事現場の鉄パイプまでちょろまかしては数人単位で返り討ちにしていた僕も客観的にみるとかなりの不良だったのだろう。
ま、今となってはもはや昔のことだ。それに、あの経験もそう悪いことばかりではない。ダークシグナーになってから著しく底上げされた身体能力は、あの時期に少しでも体力消費を抑えて効率的に逃げ回ったり隠れては不意打ちしたりといった体の動かし方を頭に叩き込んでおかなければ絶対に使いこなせなかったろう。
とと、つい昔のことを思い出してしまった。そう愉快な記憶でもないし、なるべく頭の片隅で放置しておきたかったのに。それはともかく、今はこの小包だ。
「箱の中身はなんじゃろな、っと。カード?」
『うわ〜ん、清明のダンナ〜ッ!』
「!?」
『へ?……きゃんっ!』
包みを解いた瞬間、見えてきたのはデュエルモンスターズのカードの裏面。何気なく拾い上げて表にすると、その中から黄色の顔が奇声とともに迫ってきた。咄嗟のことに受け止めてやる余裕もなくさっと身をかわすと、そのまま僕の顔の横をすり抜けて後ろの壁に頭から突っ込んでいく。ベシリ、という嫌な音がして、気を失ったらしいその見慣れた精霊……おジャマ・イエローが床に倒れた。
「イエロー!?なんでここに……」
手の中に残ったカードも、当然おジャマ・イエロー。精霊憑きということは、どう考えてもこれはもう万丈目のカードだろう。完全にのびてしまったイエローを持ち上げ、とりあえず机の上に寝かせておいた。今のうちに、十代も呼びに行こう。どうせ興味は持たないだろうけど、そのせいで隠し事をしたみたいになるぐらいなら最低限彼の耳にも入れておいた方がいいだろう。
「なあ清明、今聞き覚えのある声が……」
「あ、お帰りー」
と思ったけど、わざわざ僕が出向くまでもなかった。釣り竿片手にちょうど帰ってきたらしい十代が、ドアを開けてひょっこり顔を出す。
「おジャマ・イエローじゃないか。何してるんだ、こんなところで?」
「そんなもんこっちが聞きたいんだけどね。ほーれ、起きろー」
『う〜ん……はっ!』
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