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KANON 終わらない悪夢
88二人の悪夢
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「テレビでもしてた、好きな者同士ならこうするって」
 やはり一般常識の無い舞ちゃんは、姉弟でも女同士でも「好き」ならキスもアレもしてしまうらしい。
 光が収まって周囲から三人の状況が見渡せるようになると、また警官達が声を掛けた。
「今のは何だ? 刀を置いてこっちに来るんだ!」
 幸い佐祐理の命は助かったが、周囲の群衆と警官は残っていた。祐一は「面倒な事になった」と思い始めた。
『…今見たことは忘れて、早く帰って』
 全力を出し切った後なので、舞の心の声は弱くなっていて、興奮状態で拳銃まで構えている警官達を征するには、全く力が足りなかった。
「歩道に伏せて、手を背中に乗せろっ!」
 更に興奮状態になり、語気も荒くなってしまう警官。

 そこで柏手(かしわで)を打つ音が聞こえ、そちらに注目が集まった。
『皆さんお騒がせしました! これは学生が文化祭で発表する映画の撮影です!』
 暗がりから美汐が現れ、フルパワーで指を振るうと、群衆と警官までが術に掛かり、緊張を解いて行った。
「何だ… 撮影か…… 道理で特殊効果もある訳だ……」
「全く、人騒がせな…… 許可は取ってるのか?」
「君たち…… 撮影なら早く言ってくれよ……」
『すみません、学生なので許可が必要とは知ませんでした、本当にお騒がせしました』
 ビデオカメラを持った女学生に謝られ、虚ろな目をしながら笑顔になっていく警官達。群衆も笑いながら解散していった。
「美汐っ、どうしてここに?」
「ずっと、見てたんだよ、ゆうくん」
 祐一の後を追い続け、舞の力が衰える瞬間を待っていた美汐。要はストーカーである。
 二人の共倒れを願っていた美汐にとって、この結末は望んだものではなかったが、大事な大事な「ゆうくん」まで逮捕され、楽しい学園生活を台無しにされたり、前科が付いて自分とのバラ色の将来が閉ざされるのは嫌だったらしい。
「移動302より本部、先ほどの決闘及び武器準備集合の通報は誤報、高校生による無許可の映画撮影によるものでした、厳重に注意してから解散させます」
 もちろん、舞と偽舞との対決が始まる前に、駅前の公衆電話から「女子高生同士が男を取り合って刀を持って殺し合いをしている」と匿名の通報をして、最悪の状況になるよう準備したのも美汐なのは言うまでもない。
「本部了解、駅北東部で202発生、直ちに現場に向かわれたし」
 祐一が上着を佐祐理にかけてやり、四人が残った警官に説教を受けている間、パトカーは別の事件現場に移動して行った。

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