第11話 飛鳥竜士の過去
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場に戻ることになった。……でも」
言いづらくなったのか、途中から声が萎み始めた父に代わり、かりんが強い口調で続きを語る。その語気は、ある部分でひときわ強いものに変わった。
「……その同僚が、あろうことか『勝てっこない』なんて泣き声を吐いて、戦場から逃亡したのよ。妊娠していて、早く走れない姉さんを置き去りにして!」
「そんな……!」
「義兄さんは重傷を負いながら、果敢に戦って私を逃がしてくれた。結果として、義兄さんはソラスには勝てなかったけど……充分に足止めしてくれていたわ。でも……みんな生き延びたと思って、帰還した私達を待ってたのは……」
本来なら、同僚に連れられて更に遠くへ脱出していたはずのかのんは。腹の子もろとも、夫の足止めを破ったソラスに踏み潰されていた。
かりんの脳裏に、義兄と共に姉「だった」モノを見つけた時の記憶が蘇る。決して許されない、EDF隊員の愚行が生んだ悲劇と、自分の「罪」の象徴たる記憶が。
「……そのあと、義兄さんは私達の前から姿を消した。『一文字竜士』の名も捨てて、旧姓の『飛鳥』を名乗って」
「――かのんさんを守れなかった私には、あなた方の家族である資格など、ありませんから」
「そんなはずがあるか! 今言ったばかりだろう、私は君の父になると……!」
昭直は懸命にリュウジに呼び掛けるが、当の本人は儚げな苦笑いを浮かべるばかりで、取り合う気を見せない。
「……アスカ隊員。君が私の要請に応じて、イギリス派遣の任務を引き受けてくれたのは……イチモンジ家を去るためだったのか?」
「渡りに船、だったことには違いありません。ただ、私は単純に上の命令に従っただけです」
「……そうか」
話を聞き続けていたバーナデットは、鎮痛な面持ちで部下の横顔を見遣る。副司令が今回の視察に拘った理由が判明し、合点がいったように息を漏らした彼女は、リュウジの様子を静かに見守っていた。
「リュウジに、そんな過去があったなんて……」
「……ま、血の繋がりがないにしても、こうして想ってくれる家族がいるってのは、いいことなんじゃねぇのか? イマドキ、家族が健在な隊員の方が珍しいんだぜ」
「アーマンド隊員の言うとおりだ。――率直な話。私達はこの視察を気に、竜士を極東支部に送還したいと思っている」
「なっ……そんな!」
その時。昭直の口から出た発言に、フィリダが思わず立ち上がる。
「何もおかしなことはないだろう。竜士は元々、極東支部の隊員だ。元いた部隊に帰ることに、問題があるかね」
「待ってください! 副司令ッ!」
顎に手を当て、考え込んでいるリュウジを一瞥し、フィリダは声を震わせる。
――戦後から数ヶ月。この復興の日々の中、自分もアーマン
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