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逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 48
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ら》えなど、酒場での仕事を増やしてもらい。
 意味もなく、ネアウィック村の周辺をうろつき。
 強めのお酒を飲んで、深く眠る時間も増やし。
 グレンデル宅へ足を向ける回数も次第に減っていき……

 心が、凍っていく。

 誰もいない。
 何も無い。
 母親を亡くしたばかりの子供に気を遣わせて。
 優しかった人の願い一つも叶えられず。
 与えられた罰も、アルフィンの気持ちを利用して、(てい)よく手放した。

 自分はいったい、何をしてるのか。
 どうして、生きているのか。
 どうして、生かされているのか。

(……静かだ……)

 海の彼方をじっと見つめ続ける小さな背中が、何故か黒く染まっていく。
 波音や鳥の声がどんどん遠ざかり。
 暖かさも冷たさも、肌を撫でる潮風の感触さえも消え去って。

(ああ、そうか……。これは……)

 最後に残った思考は

(……(なぎ)……だ……)

 少女の歌も謝罪の言葉も響かない、底無しの暗闇に堕ちて……溶けた。



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