Side Story
少女怪盗と仮面の神父 48
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他人に育てられた。
この母娘の未来こそ、ブルーローズが奪い取ったものだ。
せめてもの救いは、養父母が惜しみない愛情を注いでくれたこと。
しかしその愛情も、今、再び欠けようとしている。
義母の病死がアルフィンの心に残す影響は……計り知れない。
「あの子を生かして。決して、悲しい思いだけはさせないで」
「……無理よ。私はあの子の顔さえまともに見られないの。一緒に居ても、あの子が傷付くだけだわ」
「いきなりじゃなくて良い。ゆっくりで良い。ちょっとずつ距離を縮めて、踏み込めないとしてもどうか離れていかないで。常に近くで見守っていて。そして、いつの日かあの子に……アルフィンに本来の笑顔を返してあげて。それが貴方達への罰で、死に行く母親の願いよ。叶えてくれるでしょう? ブルーローズのハウィス。だって」
義賊は、弱きを助けてくれる人達、だものね?
悪戯っぽく笑うティルティアに、ハウィスは目を丸め
「……酷い人。そんな風に言われたら……逃げようがないじゃない……」
苦笑いと涙を一粒、静まり返った室内にポトリと落とした。
結果を言えば、ティルティアの願いは叶えられなかった。
王都へ帰る直前だったエルーラン王子に、働かざる者食うべからず! と酒場での給仕職を勧められ。村に潜む第三王子と騎士団員の協力で、家事や料理を覚え。一人暮らしにも少しずつ馴染み。
ティルティア亡き後は、彼女が望んでいた通りアルフィンの生活をできる範囲で支えようと、交わす言葉は少ないながらも怯える心を押し隠して家事全般を預かり、やがてグレンデル宅の合鍵を託されるまでにはなった。
しかし。
エルーラン王子から管理を任された家と職場、グレンデル宅を行き来する毎日は、他ならぬアルフィンの強い要望で終わりを迎える。
「私は大丈夫です。村の人たちやハウィスさんにいろいろ教わりましたし、自分のことは自分でできるようになりたいんです。だから、ハウィスさんはハウィスさんのために時間を使ってください」
アルフィンは、自身がグレンデルとティルティアの養子だったこと。
ハウィスが自身を恐れていることを、既に知っていたのだ。
あるいは、ティルティアとの会話を扉越しに聴いていたのかも知れない。
そこいらの大人よりもよほど規則正しく丁寧な生活を実践して見せつける女の子には、痛々しいほどの気遣いが垣間見えた。
アルフィン自身が手助けを断った。
なら、もう良いだろう。
幼さ故に多少の不安はあるが、時折家を空けるとはいえ父親も村の人達も居るんだし、自分が家政婦代わりを続ける理由はない。
何かあったらいつでも呼んでと言ってグレンデル宅の鍵は預かったまま、買い出しや料理の|下拵《したごし
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