38 書店
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いいえ・・・」
「じゃあ、その子に本を譲っておくれ。こっちも商売だからね」
「ちぇっ、覚えてろっ!」
二人組の女子たちは本を投げるようにリリィに渡して店を出ていった。
「笹山さん、ごめんなさい。私の事に巻き込んで」
「いいのよ、大事なクラスメイトだもん」
「う、うん・・・」
リリィは『広島まちめぐり』の本を買い、笹山は月刊の漫画雑誌を買って書店を出た。
「リリィさん、広島に興味あるの?」
「うん、昨日受像機で広島の紹介してる番組見て興味持ったの」
「ふうん、図書館にもあると思うけど」
「それでもいいけど、一々返さなきゃいけないから、家でゆっくり読みたくて」
「そうね、その気持ちわかるわ。私は漫画の雑誌は図書館にないから買わなきゃいけないの」
「マンガね、面白そう」
「ふふ、なら私が読み終わったらリリィさんにも貸してあげるわ」
「いいの?ありがとう・・・」
その時、二人の前に先ほどの女子が立ちふさがった。が一人だけだった。
「おい、さっきはよくも邪魔してくれたな!」
リリィと笹山は後退りして、振り返って逃げようとした。しかし、反対側からもう片方の女子に待ち伏せされていたようで二人は挟み撃ちにされてしまった。
「なあ、茉友、買ってんだったら、立ち読みすることなく、ゆっくり読めるぜ」
「だな、今すぐよこせよ。でないとこの道は通さねえぞ」
リリィはどうすればいいかわからなかった。せっかく買ったのにすぐ手放すなんて買った意味がないし、同じものがいつ入荷するかするかわからず、仮に入手可能になってももう一冊買える余裕もない。
「リリィさん、背中をくっつけて」
「え?」
リリィは笹山の言うとおりにした。背中を付けた途端、笹山はリリィが買った雑誌の入った紙袋を取り、自分が買った雑誌の入った紙袋と共に背中に挟んだ。
「んだあ、そんとこに隠したって意味ねえぞ!」
「わかったわ。あげるから許して」
「え?ちょっと笹山さん・・・!!」
「悪いけどもう諦めて!」
「へえ、意外と素直に聞いたな」
二人の女子は感心した。笹山が紙袋を差し出す。茉友と呼ばれた女子が奪うように受け取る。その時だった。
「リリィさん、走って!」
「え!?」
笹山はリリィの手を取り、走り出した。
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