暁 〜小説投稿サイト〜
カチューシャEVERYDAY
第二章

[8]前話 [2]次話
 その夏を見ながら僕はまた彼女に言った。
「こうしているとね」
「幸せ?」
「僕ずっと暗かったけれど」
 この娘と一緒にいられる様になってだった。
「それが変わったし」
「そういえば二年の最初の頃と比べて」
「性格変わったよね」
「明るくなったわね」
「君と一緒にいられる様になってさ」
 変わった、彼女にも言えた。
「幸せだよ。だからずっとこうしていたいよ」
「本当に大袈裟よ。けれどね」
「けれど?」
「そういう風に言ってもらったらね」
 彼女は満面の、太陽に負けない位眩しい笑顔で僕に言ってきた。
「私も嬉しいから」
「嬉しいんだ」
「そんな風に言ってもらって嬉しくない娘なんていないわよ」
 そうだと。僕にその笑顔で言ってくれる。
「それにね」
「それに?」
「これ。覚えてる?」
 言いながら自分の頭に手をやって白いカチューシャを外してきた。
 その外したカチューシャを僕に見せてこう言ってきた。
「このカチューシャ。君がくれたものじゃない」
「うん、だって似合うから」
「私カチューシャ好きだし幾つも持ってるけれど」
「いや、似合うからね」
 だからこの前休日のデート中に僕は彼女に買ってあげた。その白いカチューシャも彼女に凄く似合っている。
「だからなんだ」
「それでよね」
「気に入ってくれてる?」
 僕はそのカチューシャを外した彼女を見て尋ねた。
「どうかな」
「気に入ってるからね」
 だからだと。彼女はまた言ってくれた。
「だから今も着けてるの」
「そうなんだ」
「ええ、プレゼントしてくれて有り難う」
 彼女はその太陽よりも眩しい笑顔で僕に言ってくれる。
「ずっと付けさせてもらうね」
「そうしてくれるなら僕も嬉しいよ」
「それじゃあ」
 やり取りの後で彼女はカチューシャを頭に戻そうとする。けれど。
 ここで急に風が吹いた、そしてその風が今頭に付けようとしたカチューシャを吹き飛ばしてしまった。
 カチューシャは海の中に向かう。僕はそれを見て咄嗟に動いた。
 無意識のうちにカチューシャを手に取って海の中に落ちない様にしようとした、海の中に落ちたらカチューシャみたいな小さなものはそのまま流されてしまうから。
 だから慌てて前に出た。カチューシャは前に出ながら上に伸ばした右手の中に掴んだ、けれどあまりにも咄嗟に前に出てバランスを崩してしまって。
[8]前話 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ