第二章
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その夏を見ながら僕はまた彼女に言った。
「こうしているとね」
「幸せ?」
「僕ずっと暗かったけれど」
この娘と一緒にいられる様になってだった。
「それが変わったし」
「そういえば二年の最初の頃と比べて」
「性格変わったよね」
「明るくなったわね」
「君と一緒にいられる様になってさ」
変わった、彼女にも言えた。
「幸せだよ。だからずっとこうしていたいよ」
「本当に大袈裟よ。けれどね」
「けれど?」
「そういう風に言ってもらったらね」
彼女は満面の、太陽に負けない位眩しい笑顔で僕に言ってきた。
「私も嬉しいから」
「嬉しいんだ」
「そんな風に言ってもらって嬉しくない娘なんていないわよ」
そうだと。僕にその笑顔で言ってくれる。
「それにね」
「それに?」
「これ。覚えてる?」
言いながら自分の頭に手をやって白いカチューシャを外してきた。
その外したカチューシャを僕に見せてこう言ってきた。
「このカチューシャ。君がくれたものじゃない」
「うん、だって似合うから」
「私カチューシャ好きだし幾つも持ってるけれど」
「いや、似合うからね」
だからこの前休日のデート中に僕は彼女に買ってあげた。その白いカチューシャも彼女に凄く似合っている。
「だからなんだ」
「それでよね」
「気に入ってくれてる?」
僕はそのカチューシャを外した彼女を見て尋ねた。
「どうかな」
「気に入ってるからね」
だからだと。彼女はまた言ってくれた。
「だから今も着けてるの」
「そうなんだ」
「ええ、プレゼントしてくれて有り難う」
彼女はその太陽よりも眩しい笑顔で僕に言ってくれる。
「ずっと付けさせてもらうね」
「そうしてくれるなら僕も嬉しいよ」
「それじゃあ」
やり取りの後で彼女はカチューシャを頭に戻そうとする。けれど。
ここで急に風が吹いた、そしてその風が今頭に付けようとしたカチューシャを吹き飛ばしてしまった。
カチューシャは海の中に向かう。僕はそれを見て咄嗟に動いた。
無意識のうちにカチューシャを手に取って海の中に落ちない様にしようとした、海の中に落ちたらカチューシャみたいな小さなものはそのまま流されてしまうから。
だから慌てて前に出た。カチューシャは前に出ながら上に伸ばした右手の中に掴んだ、けれどあまりにも咄嗟に前に出てバランスを崩してしまって。
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