第21話『奪われた流星の丘アルサス〜忍び寄る魔王の時代』【Aパート 】
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の紅玉が静かに紅く輝く。
「一人残らず叩き潰してやる!!」
不殺は守る。だが、腕やアバラをへし折ることに、凱は何の躊躇もなかった。
ユナヴィールを包み込む暗雲――夜と闇と死の大気を薙ぎ払う、『銀閃の勇者』という旋風が吹き荒れようとしていた。
【同刻・アルサス・中央都市セレスタ】
凱と別行動をとったザイアンはまともに休むことなく、アルサスの中心都市セレスタへ向かった。
正確には、連行だった。
彼がセレスタの門をくぐったときに複数の兵士が出そろっていたからであり、ザイアンは今に至るまでの経緯を語ろうとしなかったからだ。
おそらくフェリックスはそれを聞いて、すぐに連行しろと命令したに違いない。ザイアンは周囲の兵士たちに固められ、総指揮官の天幕に通された。つい先立ってここを訪れたとき、ザイアンは周囲の者たちと同様に、父上への忠誠心熱き兵士だった。
そう――アルサスを焼き払えという苛烈な命令にさえ、怯むことがなかった。
だが、今は父の威を借りていた『仮初』の自分と全く違う。
銀の流星軍という別勢力の、それも大使ともいうべき存在だ。少なくとも、ザイアン自身はそのつもりだった。
(……『相変わらずの光景』だな……あの頃から全く変わっていない)
燃える水を採取する為に発掘作業を『機械』のように続ける『元アルサスの民』たる奴隷たち。
かすかな一瞥をくれただけで、ザイアンはそれほど見向きもしなかった。
ひとりの女性が――貴重な『燃える水』をこぼした。
それを見かねた『監視』が鞭を持ち、痛めつける。誰も助けようとしない。
ザイアンにとって、既に見慣れたはずの光景だ。だけど、眼をそむけようとも、耳をふさぎたくなるのは本当だった。
ヴォルン家の屋敷の前――そこには待ち構えていたかのようにたたずむ父の姿があった。
目線があった途端、獅子の牙のように鋭い父の目がザイアンを射抜いた。
「……ザイアン」
「……父上」
いつもと同じ出会いがしらの一声。ザイアンはその視線を避けようとしたものの、寸の所で思いとどまり、真っ向からそれを受け止める。
フェリックスはそんな彼の変化にさえも気づかない。ザイアンを連行した兵士に、乱雑に命ずる。
「貴様等は下がれ。ザイアンとは二人だけで話をする」
ザイアンを連行してきた兵士たちは、背筋を整えて敬礼した後、二人のテリトリーを離れていった。
やがて彼等の姿が見えなくなるのを確認すると、ザイアンは心を絞るような気持ちで問いただした。
「父上は……この戦争をどうお考えなのでしょうか!?」
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