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魔弾の王と戦姫〜獅子と黒竜の輪廻曲〜
第21話『奪われた流星の丘アルサス〜忍び寄る魔王の時代』【Aパート 】
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想世界は間違っていると思う。
だが、心のどこかでまだお互いに『語り尽くせていない』のではないか?
まだ父上は気づいていないのではないか?
ならば、まだ道を戻すことは可能ではないか?
自分なら、父上の手から『銃』を手放すことだってできるのではないか?
できる事を尽くさないことは、ザイアンにとって何か卑怯に思えた。
情けない絞りカスから生まれた自分という存在。年齢の割に頼りない、不肖の息子かもしれないが世界でただ一人、自分はあの人と血を分け合った親子なのだ。

「……分かった」

ザイアンの心情を理解したのか、凱は反論をしようとしなかった。

「ガイ。本当に止めなくていいの?」

フィグネリアの忠告はもっともだった。
もし、万が一ザイアンが銀の流星軍の中核たる凱の居場所を通報すれば、即座に全包囲網を敷かれることは間違いない。取返しが付かなくなる前に手を打つのは当然のことだった。
ここで討ち取るという手を考えたフィグネリアだったが却下した。
もし、凱たちの居場所を通報せしめようとするならば、既にテナルディエの間者が後を追ってくるはずだ。少なくとも、ザイアンがウソを言っているようにも思えなかったのだ。

(あの坊やは……本気でテナルディエを止めるつもり?)

一瞬、フィーネの驚いた瞳の色がかすかに揺らぐ。そんな彼女の肩に凱はそっと手を置いた。
そして凱は静かにザイアンへ言った。

「……ザイアン」
「――はい?」
「希望を捨てちゃいけない。何より、君自身がそれを分かっているはずだ」

ザイアンは固く息を呑んだ。

「俺達はまだ心にともした『流星』を……消しちゃいけないんだ。生き延びろ。例えどんな困難が待っていても、『勇気の火』がある限り」

最悪の場合、ザイアンはそのまま帰らぬ人となるかもしれない。だが、自分の一回りの年齢を生きている青年には、ザイアンの心情を看破していた。

――差し違えてでも、父上を止める。

ふいに、ザイアンは隠し持っていた携帯型の『銃』の引金に手をかける。心の引き金と共に。
何も凱はザイアンへ気遣って言っているのではない。例え、『過去にアルサスを襲撃した』罪を背負っていようとも、今の時代に必要とされているから、凱は生き延びろと言ったのだ。俺やティッタ、ザイアン、フィグネリア、リム達の、ブリューヌに残された『流星』こそが、切実に必要とされているのだから。

「……勇気?」

ザイアンはそっとつぶやく。

「そう――勇気だよ」

凱もまた優しくつぶやいた。
勇気――――そういえば、久しく口にしていなかった言葉だなと、凱は思った。
同じくザイアンも、忘れかけていた……いや、正確には手放しかけていた言葉を、ようやく思い出すことができた。
怖い気持ちに立ち向
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