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魔弾の王と戦姫〜獅子と黒竜の輪廻曲〜
第21話『奪われた流星の丘アルサス〜忍び寄る魔王の時代』【Aパート 】
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をていよく利用して、戦局を変えようとしているのだから。

「分かった。戦闘になったら俺達がティッタを守る。一緒に行こう。アルサスを取り戻す為に」

一瞬、ティッタの顔に安堵が浮かぶも、次の一言で緊張に染まる。

「ただし条件がある。身の安全の優先度だ。俺達に何かあったら、ティッタ。君が真っ先に逃げてほしい」

そんな結末にするつもりはないが、ティッタまで道連れにする結果だけは何としても避けたい。
そして凱はフィーネに視線を配る。

「フィーネ。お願いしていいか?」
「分かっている。あんたなら絶対に連れていく事くらいは思っていたよ」

既にその事を予測していたのか、フィーネは気前よく返事をしてくれた。思わず凱はあっけにとられた。
リムの話では、黒髪の彼女はどうも醒めた思考ルーチンから打算的に動くと教えられていた。同じ醒めた思考パターンを持つものならば、ここで疑うことを忘れない。
だが、凱にはどうしてもフィーネに対して悪い感情を抱く人物には見えなかった。
戦姫の間ですこぶる悪名轟くヴァレンティナに対してもだった。
ともかく、凱は彼女たちに対して疑う事をしなかった。それは、二人とも自分を信じてくれているからだ。

「簡単に引き受けてくれていいのか?」
「気にしないで。単に私も『自称』魔王となったテナルディエの顔を拝んでやりたいだけだ」

なるほど――と凱は思った。過去にとある『追撃戦』の戦場でテナルディエ側に雇われていたと、彼女自身は言っていた。何かしらの因縁が絡む以上、これ以上自分が係ることはないということ。
ともかく、凱は最悪の場合、ティッタを守り切れない場合に備えて、(フィーネ)栗鼠(ティッタ)の護衛を依頼した。










―――――そして時は戻る―――――










「ねえ、そろそろティッタを連れてきた理由を教えてくれてもいいんじゃないか?」

ティッタの護衛――という依頼を引き受けたのだから、せめて目的くらい教えてもらわねば、割に合わないというもの。
少し時間を巻き戻して、思い返してぽつりと思う。凱とて何か思うことがあって、ティッタを連れてきたのだろう。
最初はアルサスへ連れていくことに反対だったのが――
フィグネリアの疑問に凱は答える。

「ティッタは俺達を戦闘以外で守ってくれる。それに……」

凱の、海のように青い瞳が、ティッタのはしばみ色の瞳を覗き込む。背丈の違いもあって、不思議な感覚がティッタを包む。

「ティッタ――君には行かなければならない『丘』があるはずだ。それを分かったからこそ、君は俺達に打ち明けてくれた」

行かなければならない丘。それは決してアルサスを差しているわけではない。
この戦い。この時
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