第21話『奪われた流星の丘アルサス〜忍び寄る魔王の時代』【Aパート 】
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凱がためらいがちにティッタへ問いかける。
うまく問えない凱の台詞は、痛々しさを伴ってあたりに響く。
「正直に言えば、あたしだって怖いです……」
何か、ぽつりぽつりと語り始めるティッタ。徐々に灯りが宿るロウソクのように。
「ティグル様の代理として……あの地の民を護る義務があります!いざという時に彼らを守る為!あたしは!」
「ティッタ……」
責任感の強い娘だなと――フィグネリアは思う。自分を育ててくれた母以外に、生まれ育った貧村に、かつてこのような気丈の人間がいたかと。
同時にリムもフィーネと同じ感想を抱いた。かつて、テナルディエ軍襲撃のさいに、たった一人でティグルの屋敷で待ち続けていたことがあった。もし、一つでも取り間違えていたら、命を落としていたかもしれない。でも……
主に留守を任された。
それは、まぎれもない自分の果たすべき『使命』だと信じたから。
――ティグル様にこのお屋敷の留守を任されました!それを見捨てるなんて……できません!――
思い出すのは、涙を晴らしながらティグルに抗弁するティッタのほとばしる、あの言葉。
それだけじゃない。
以前、テナルディエ軍がアルサスを攻める前日でも、彼女の強さの片鱗は見えていた。
バルコニーで凱とティッタはこのように想いをぶつけ合ったことがある。
――ガイさんはくだらないと言いましたけど、たった一人の大切な人を待ち続けるのがそんなにくだらないことなんですか?――
昔を思い出して過去を振り返って凱は逡巡する。狂気と信念の構成群にて第二第三のテナルディエを生ませない、この戦いに終止符と機転をもたらす方法はないかと。
テントの隙間から冷たい風が吹いて、みんなの頬をそよぐ。
「でも――実際に私を連れていくかどうかは、ガイさんの判断に委ねます」
ティッタは自らの想いを言い切った。もし、足手まといになるなら、いっそ見捨ててもらっても構わないと。
無論、凱にそんな事できるはずもないし、するつもりなど毛頭ない。
だから凱は決意する。この子の勇気に俺も答えなければならないと。
―――――そうか。
もし、フェリックス=アーロン=テナルディエが皆の聞きし人物評価の人間ならば、ティッタの『想い』は竜具以上の武器になるかもしれない。
強者と弱者。
それを区別する者は何よりも……
(……俺はティッタの想いと、ザイアンの勇気を戦いの道具にしようとしている)
本当に俺は……正しいのだろうか?これから対峙する魔王との駆け引きに、皆の想いを『道具として』利用しようとしている。
そんな勇者が……果たして本当に正しいと言えるのか?勇者と言えるのか?正義と言えるのか?
やはり、そういった罪悪感は拭えない。自分より年若い人間の決意と『想い』
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